下水より

『土屋文明歌集』角川文庫(昭和30)には
文明の自選三歌集、『放水路』『ゆづる葉の下』『山の間の霧』
が収録されています。
このそれぞれが2~3冊の歌集から自選したもので
目次を見れば、例えば
放水路
ふゆくさより
往還集より
山谷集より
と、どの歌集から自選したのかが書いてあります。
(この目次は歌集に『 』が付いていません。
よくある書き方なら『ふゆくさ』より、とかになりますね。)
この目次を見ていくと、一番最後に
下水より
という一行があり驚きました。
下水って・・・。
土屋文明に『下水』なんて歌集あったっけ?
いや、誰であっても自分の歌集に『下水』なんてタイトルつける?
しばらく考えて分かりました。
これは、この文庫の数年前に出た歌集、
疎開先での戦中・戦後すぐの時期の歌を収録した
『山下水』のことなのです。
この頃は活版印刷なので活字が抜けることがあったんですね。
文明の疎開した家の庭には
山から引かれた清水が筧を伝って流れていました。
また、付近には澄んだ泉がたくさん湧いていました。
『山下水』はそうした澄んだ水に生命力をもらったことから
つけた歌集タイトルなのだと思います。
それが一字抜けたら「下水」。誤植、怖すぎる。
朝よひに真清水に採み山に採み養ふ命は来む時のため 土屋文明『山下水』
霜いくらか少き朝(あした)目に見えて増さる泉よ春待ち得たり 同
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