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アーカイブ "2019年07月"

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昨年6月、東京西部にある多摩森林科学園を訪ねた折り。
その日はどんよりと曇っていて、開園と同時に入ったのは
私と友人の二人のみ。受付の人がにこやかに、
「今なら、モリアオガエルの卵、見られますよ」
と、教えてくれました。言われた通り、建物の裏手にある、
小さな池の脇の茂みに目を凝らすと・・。

先に見つけたのは、森林歩きが趣味の私の友人。
「ほら、あそこ!」と指さすのだけれど、私はなかなか
それらしきものを捉えられず。というのも、思っていたより
ずっと高い枝の上に、あったから。池の水面から、3mちかく。
孵化した後は、雨の力で、水面にたどり着く、らしい。
う~ん、確かに、枝はわずかながら池側に張り出している。

不思議な命の営みに、なにかとても厳粛な気持ちになりました。

 ゆるゆると鳰照る月見坂のぼりモリアオガエルの卵に出会う
           白石瑞紀『みづのゆくへと緩慢な火』

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港区六本木に立つ、高層ビル六本木ヒルズ。
蜘蛛の形のオブジェの下から見上げるように撮影しました。
最上階の52階付近は、時折靄がかかって、地上からは
見えないこともあるのですが、撮影の時は幸い日が差して
薄い青空のもと、まあまあの写真が捕れました。

高速エレベータで52階へ。ここには森アーツセンターの
ギャラリーがあって、当日は「ムーミン展」が開催されていたからです。
大好きなムーミンの挿絵の数々を堪能した後、ガラス越しに東京の
街並みを見下ろしました。

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ビルの北側からの展望です。
向かって左手に見えるのは、斎藤茂吉も眠る青山墓地。
こうしてみると、東京の街は意外に高層ビルが少ないのですよね。
そして、こんな都心に大きな墓地が残っているということにも
驚かされてしまいます。夜ここから見ると、墓地近辺は真っ暗、のはず。
生者は誰も住んでいないのですから。

 明るいだけ、あるいは暗いだけの世界隣り合ひつつ都市の闌(た)けゆく
                   栗木京子『けむり水晶』

十数年前、奄美大島を訪れた折、黒糖焼酎の製造工場も見学。
そこで見つけた、ある商品のラベルに目を引き付けられました。
古いお札が利用されていたから。これは沖縄、奄美群島が米軍
占領下におかれていた1945-1958年9月まで唯一の通貨だった
米軍発行による軍票で、俗にB円と呼ばれていたお札でした。
軍票といえば、松本清張の小説で有名になった「西郷札」が
思い出されるところですが・・・。

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焼酎の名前、「加那」は、この地に一時潜居を命じられていた
西郷隆盛の愛人の「愛かな」の名からつけられているらしいのです。
(「かな」は方言で、「愛しい人」という普通名詞でもあるそうな)
二人の間に生まれた子は後の京都市長・西郷菊次郎。

この焼酎は、ほとんど東京の高級バーに卸されていて、一般には
出回らないそうです。小さい一本だけ譲ってもらって、ホテルで
ちびちびと味わいました。奄美の黒糖焼酎には、ちょっとここでは
書き切れない位、複雑な歴史があって・・。でも焼酎は、いかにも
黒糖から作られているらしい、深い甘味と爽やかな口当たりでした。

 うまさけはうましともなく飲むうちに酔ひての後も口にさやけき
                  坂口謹一郎『発酵』

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横浜歌会では一年に四回、題詠を行っていて、今月のお題は「粋」。
純粋、抜粋、生粋、粋人、などの熟語が選ばれる中、次は「無粋」を
詠んだ粋な歌(ここへの掲載に際し、ご本人の了解を得ています)。

  金のなる木と無粋な名前つけられて路地に花月の花白く浮く
                       関野裕之

金のなる木は我が家でも二十年ほど鉢植えで育てていますが、
一度も咲かず。それが今年の一月、知人宅で「咲いたよ」と
はじめて見せてもらったばかりでした。それがこの写真です。
ふーん、「花月」ともいうんだ。と、出席者は一様に驚き。
まさか、「金のなる木」が本名とは、誰も思っていなかったみたい。
「フチベニベンケイ」ともいうそうです。
でも、もちろん「花月」だから成り立った歌。
ともあれ、わが家で一度も花が咲かないのは、はたして、どんな
「警告」なんだろう、などと考えてしまいました。

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今日は第三日曜日、東京歌会の日です。
最近は変わることもあるようですが、三十余年も前から
主な会場は東日本橋の産業会館。東京平日歌会、東京で行う校正作業も。
JRの浅草橋駅から少し南へ行き、大川に添って東へ数分歩くと、
隅田川の手前に柳橋があり、わたると真ん前が靖国通り。
その先、両国橋のたもとに、産業会館はあります。
このあたりは、ほんの少しながら江戸の雰囲気が残っていて、

 やなぎばし船宿六軒それぞれに木の階(きざはし)を川面に降ろす
 舫ひある綱は張りまた緩みたり水にまどろむ船に添ひつつ
                   村上和子『しろがね』

こんな風情が味わえます。産業会館は薬研堀通ともよばれる
小道に面していて、このあたりには薬研(やげん)とという
漢方薬を砕く器具の形をした堀があったことから名付けられている
らしいのですが。江戸時代は近くに遊女が沢山いて、
堕胎専門の女医も多く住んでいたことに由来するとも・・・。
あれこれと過去を思いながら歩くにも格好の地です。写真のような、
薬研不動院もありますが。この窮屈な建ちように、地価の高さが
うかがえますね。我が家からは二時間近くかかり、このところ
ずっとご無沙汰してますが、お近くの方は是非東京歌会へ!

夕方、まだ明るいうちに地上に出てきてしまったセミの幼虫がいたので、保護(拉致?)してきて、ベランダの鉢植えに託す。
 
ひさしぶりに、羽化を観察する。

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幼虫の殻割れてなまぐさきまで若き緑の蝉の背が見ゆ/高安国世『新樹』

なまぐさき……といえば、そうかもしれないが、
新しい翅は、うつくしい緑色だ。

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きょうの鴨川。
シロツメクサの花にミツバチがいるので何枚か撮る。
 
その場では気づかなかったが、脚になんかつけている。

これはあまりきれいな色ではないが、花粉団子だろう。
花の蜜とあわせて、ミツバチが集める重要物資のひとつ。

花粉球足に携えミツバチはしばし浮きたるマメの花の上/早川志織『クルミの中』

シロツメクサも、マメ科の植物ではある。

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古い寺をめぐるとき、屋根にいる獅子や鬼、怪獣を見るのが好きだ。
迫力あるものもあれば、愛嬌があって楽しいものもある。
 
こういうキャラクター?が載った瓦を「留蓋瓦」というのだそうだ。

魔除け なのか。

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それにしても雨。

ぐっしょりというか、しっぽりというか。
濡れている。

ぐしよ濡れのライオンの顔ゆがみ立つ昨日も今日も雨降りやまぬ/武川忠一『翔影以後・Ⅰ』

この作品は、生身のライオンだが。

梅雨の雨で、何日か涼しいと思ったら、ちょっとした晴れ間で蒸し暑くなる。
 
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スズメたち(おおかた今年生まれた若いスズメ)も、木陰で涼んでいる。

まだまだ本格的な暑さではないけれど、慣れていないぶん身体に堪える。

暑さにて雀ら樹より落つといふ海彼(かいひ)思ひてみづから凌ぐ/千代國一『日曇』

これは30年ぐらい前の作品。
当時は、外国のこととして「このくらいの暑さはまだましだ」と思えたのだが、最近は他人事ではなくなってきた。

 少し前になりますが……先月のはじめ、北上市で、塔の東北集会を行いました。
 楽しい楽しい会でした。
 歌会の場所は、日本現代詩歌文学館をお借りしました。たいへん親切にしていただき、とてもありがたかったです。

 文学館では、「平成の詩歌人たち ― 響きあうことば ―」という常設展が行われています。

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 ここに、河野裕子さんの歌も展示されていました。

     逆立ちしておまへがおれを眺めてた たつた一度きりのあの夏のこと

 のびのびとした自筆の原稿です。なんだか、胸がいっぱいになりました。

 展示は来年の3月までですが、とても気持ちの良い場所なので、お出かけになるといいと思います!
 「一度きりの夏」ですし。

 北上川もいいですよ。北上コロッケもいいです。

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