保育園(永田淳)
長らく書かずにおりました、申し訳ありません。
一番下の5歳児が通っている保育園は山の中腹のお寺にある。長男からずっとお世話になっていて、もうまる13年毎朝子供を送り続けている。どの保母さんよりも古く、園長先生よりもながい保育園とのお付き合いである。すなわち現在保育園に関わっている誰よりも(給食の食材納入業者よりも)うちの夫婦が長い付き合いということになる。
その園舎がこの度、耐震基準を満たすため建て替えされることになった。箇所によっては築百年以上の部分もあり、免震工事よりも建て替えの方が安くつくのだと言う。古い木造の園舎で、天井は高く、隙間風が吹き込み、床はギシギシと軋るのだけれど、それ故に懐かしみのある大好きな建物だった。私自身、長くお寺の保育園に通った経験がそういった郷愁を誘うこともあるのだろう。
明日が今年度最後の日。
今日、いつものように狭い坂道を車で登っていくと兄と妹の兄弟らしき二人が前を自転車で漕いでいた。追い抜き様に見ると、うちの2番目の子の一つ上の子(4月から中学生)とその妹(うちの3番目と同級生、4月から3年生)だった。
懐かしくなって、どうしたん? と訊くと「保育園が最後だから見に来た」と言う。二人のお母さんはなんでも手っ取り早くこなす、若いお母さんだったけれど、春休み中の子供二人を朝から保育園に向かわせたのだ。
門のところでもじもじしている二人に「入っておいでよ」と声をかけ、舎内の主任の先生に「かえで君とほむちゃん来てますよ」と伝えると、飛び出していった。そこに妹の最後の担任だった先生が出勤して来て、着替えるのも忘れて話し込んでいた。この先生は結婚されるので今年で辞められる。
保育園は卒園児がいつ行っても誰かしら知っていてくれる人がいる、そういう場所なのだろう。
4月からは仮園舎となり、うちの子が卒園する頃に新園舎となるようだ。新しく綺麗な建物もいいのかもしれない。けれど僕の記憶にいつまでも残るのは、あの古びた高い天井に扇風機が取り付けてある、あの教室なのだろう。そしてきっと、うちの子供たちもそうなのだろうと思う。