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アーカイブ "2023年02月"

このごろ、幼いころ・若いころに親しんだ著名人の訃報に接することが多くなり、その度に「ああ、あの方が…」とショックを受けています。

作家の永井路子さんもそんなお一人。
先日、97歳でお亡くなりになったとニュースで流れてきたときには「ついに永井さんも…」と思い、大きな穴が空いたような気持になりました。
永井さんの小説やエッセイ集は大好きで、今でも20冊以上は書棚に並んでいると思います。

永井さんのファンになるきっかけは高校3年生の時。
大学受験を間近に控えた学年となり、クラスの友人との会話も勉強や受験に関する話題が増えてきていました。
私は社会科は世界史を選択することにしていたのですが、覚えないといけないことが山のようにあって、でもなかなか覚えられないのですよね…
そんなとき、同じ世界史選択の友人が「これを読んだら、すごく世界史の出来事が頭に入ってくるよ」と薦めてくれたのが、この本でした。

(これ、高3の時に買った実物です。未だに我が家にあります。)

文庫本で手に入れやすかったこともあり、すぐに入手して読んだら、
何これ! 面白い!
世界史にも登場するような女性たち(それも、いろいろな時代の)の生涯について、時代背景や彼女を取り巻く人々の描写も交えながら、分かりやすい文章で紹介した文章の数々。
例えば、アグリッピナ(暴君ネロの母)、エリザベス女王やメアリ・スチュアート、マリア・テレジアにマリー・アントワネット、エカテリーナⅡ世、則天武后、それから神話の世界とも言えるトロイのヘレンやサロメ、またサッフォー、エロイーズ、ローザ・ルクセンブルク、などなど。
あっという間に夢中になりました。
そして、確かに世界史のあれやこれやが頭にすっと入ってくるような気がしました。
(だからといって、世界史の成績が急上昇したわけではないのが悲しいところですが。)

これをきっかけに、永井さんの文章がすっかり好きになり、まずは同じ「歴史をさわがせた女たち」シリーズを集め、それから他のエッセイ集、そして小説も何冊も買い集めました。
特に好きなのは『美貌の女帝』(元正天皇)、『朱なる十字架』(細川ガラシャ夫人)、『流星 お市の方』など。
また、『今日に生きる万葉』などは、万葉集をとても親しみやすいものに感じさせてくれました。

永井さんの文章は、その文体そのものも好きですが、歴史上の事象について、とことん調査し、とことん原資料にあたって確認し、そういった膨大な作業の上に得られた情報を合理的に解釈しながら書いている、そういった説得力のある文章であるという点に非常に魅力を感じてきました。
また、それまでの通説的なものや、それまでご自身も信じていた俗説的なものについても、きちんとした裏付けがあればそれを覆すことも厭わない、そういった潔さにも惹かれていたような気がします。

永井さんは亡くなってしまいましたが、文章を読むと、永井さんに語り掛けられているような気分になります。
実際に永井さんの声を聞いたことがあるわけではないのですが、そういう気持になるのです。
そういうものを遺せたということは、ものを書いてきた人間にとって、とても幸せなことだったのではないかと思います。

岡部です。ちょっと、失礼いたします。
もうすぐ弥生三月。街角に雛飾りを見かけることも多くなりました。
お雛様をかたどった、和菓子を頂戴しました。とても綺麗で
自分だけ見ているのは勿体ない気持ちがして、おすそ分けいたしたく、
こちらでお披露目することにしました。

中央が落雁でできたお雛様。他の装飾的なお菓子の多くに練りきりが使われ
ています。練りきりは、水飴と求肥を練り合わせて作られ、柔らかいので
細工がしやすく、和菓子の世界では素材としても重宝されています。
きれいに形成できるうえに、口当たりも良く、美味しいのです。

かつての雛菓子といえば、ひなあられか、菱餅が主流でしたが、
お菓子の世界は移り気で、どんどん変化し、豪華になってますよね。

 ひなあられおのこがさげて帰りくればひろげてわれはともに食みゆく
               三枝昂之『塔と季節の物語』

先日…といってももう2週間以上前になってしまいましたが、「2023あけましておめで塔! オンライン新年会」を開催しました。
おかげさまで、【昼の部】のパネルディスカッション、【夜の部】の懇親会共々、多くの会員の方にご参加いただき、とても充実した時間になったのではないかと思います。
ご参加くださった方、また開催に当たってご協力くださったみなさま、本当にありがとうございました。
今回は残念ながら参加できなかった会員のみなさま、今後もこのようなオンラインでのイベントを開催する予定ですので、次の機会にはぜひご参加ください。

そのオンライン新年会の【昼の部】ですが、現在「塔短歌会YouTubeチャンネル」に於いて、期間限定で公開中です。
期間中は、会員内外を問わずどなたでもご視聴いただけますので、リアルタイムでは参加できなかった方も、「参加したけどもう一度聞きたい」という方も、アクセスしてみてください。

 ここをクリック↓
 

【昼の部】のパネルディスカッションの内容は

 第12回塔短歌会賞・塔新人賞を語る~連作を読む・作る視点から~
 パネリスト:紫野春、田村穂隆、長谷川琳、
       宮地しもん、小林真代(司会進行)

となっております。
当日は、詠む(連作を作る)立場、読む立場、双方からの視点を交えながら、熱いディスカッションが交わされました。
熱すぎて、予定時間をオーバーしてしまったほど(それでも「もっともっと聞きたい!」と思ったのは私だけでしょうか?)。
終わりの方では、今回のパネルディスカッションで取り上げた作品(塔短歌会賞、次席、塔新人賞)の作者の方からもコメントをいただいています。
(なんと、作者は全員出席していたのです!)

なお、このパネルディスカッションの公開は2/26(日)までの期間限定となっています。
気になる方は、どうぞお早めにアクセスしてください。

それから「塔短歌会YouTubeチャンネル」の常設動画の方も、よろしくお願いします。
(このホームページのトップページにバナーが貼ってありますので、そこからアクセスできます。)

社団法人総会出席のために出かけた名古屋。ついでにトヨタの
産業技術記念館を訪ねたことは先回触れましたが、他に、有松絞で
有名な旧東海道の鳴海宿近くの有松へも、足を運びました。

十返舎一九『東海道中膝栗毛』にも

 ・・・旅人を見かけて「おはいりなされ・・名物有松しぼりおめしなされ・・」
 弥次「・・ええ、やかましいやつらだ

   ほしいもの有まつ染よ人の身のあぶらしぼりし金にかへても

と、いつものようにおちゃらけている場面があります。少しだけですが
江戸の雰囲気を残す家並みが連なっていて

有松・鳴海絞会館に入ってみました。一階は店舗。二階は小さな展示場になって
いて(二階だけ有料)素晴らしい絞の作品に息を呑みました。

絞にはいろいろな技法があって、ごく一般的な鹿の子絞などの他、三浦絞
縫絞、巻き上げ絞、蜘蛛絞、柳絞、さらにそれらを組み合わせたもの・・。
ちなみに上の写真の着物は、蜘蛛絞のようです。

こちらは絞でこしらえた甲冑。

「塔」会員の池田幸子さんは、この鳴海にほど近い地にお住まいです。

  藍甕の多くありし頃手越川は藍染川と呼ばれ流れき
 「高い、たかい。まけなせい」と弥次さんが有松絞りを値切りしあたりか
              池田幸子『繭のような白き時間』

丁度、一か月前の1月8日、「塔」の社団法人総会が名古屋で開かれ、
私も参加してきました。名古屋って、なぜかあまり縁のない地で、
わざわざ訪れることが少なく、3年前の総会と同様に、今年もこの機を利用して
街を見てみることに。何といっても日本の経済を長く牽引してきたトヨタの
お膝元の街ですから、名古屋駅から名鉄線で一つ、栄生(さこう)駅ちかくにある、
トヨタ産業技術記念館を訪ねることにしました。

かつては工場だった建物なのでとても広くて大きい。しかも駅から数分という立地。
この時点で、圧倒される気がしました。トヨタの創始者の豊田佐吉は、もとは
豊田織機という繊維産業を手掛けた人物。子供の頃、テレビでこの人の自伝風の
ドラマを見た記憶があるけれど、記念館も繊維産業にまつわる展示物から始まる。
その充実ぶりは素晴らしく、実は私はこちらの方が面白かったのだけれど。

自動車関連では、トヨタが当初、どのように車を作り始めたか、という
経緯が詳しく展示されていて、興味深かったです。米車を一台購入、解体して
仕組みを研究したあと、木型をこしらえ、それに合わせて鉄板を叩き出して
作ったらしい。最初の車が、こんなに立派だなんて(ちょっと美化してあるかな)!

普段の生活に欠かせないほど、身近になった自動車。その割には、
車そのものを詠んだ作品って、少ない気がする。自転車や列車なら、あれこれと
思い浮かぶのだけれど。栗木さんは車名入りで詠まれていたが。

  サンタナのハンドル握る朝々よ配所に夫と子を送るべく
               栗木京子『中庭(パティオ)』

サンタナは日産車・・・・。

こちらは、直径五センチ足らずの胡桃の実。びっしりと彫刻が
施されていて、二十人以上の人間、何棟かの建物、寅などの動物など
も見て取れます。だいぶ前に、私の家族が中国の知人から頂いたもの。

この胡桃の存在を突然思い出したのは、ナンシー関の『ナンシー関リターンズ』を
最近読んだから。冒頭の「彫っていく私」という自伝に驚愕したのです。

彼女の父はプエルトリコ系中国人で、代々米粒に仏像を彫る職人の村に育った。
だが、一家の主は、四十歳になると決まって発狂して死ぬ。
来る日も来る日も米粒に彫り続けていると、仏像に魂を吸い取られ、気が狂うから
と知った父は、18歳の時に村を逃げ出して、日本に密航する。築地で知り合った
日本人女性と駆け落ちして北海の離島へと逃げ出し、そこでナンシー関が生まれ・・・。

まるで怪談のような自伝、恐ろしくも魅力的でのめり込むように
読んだのですが・・・。どうもフィクションらしい。この書に付されている
彼女の略歴には、「青森市でガラス店を営む日本人の両親のもとに生まれる」
と明記してあるんですからね。

でも「米粒に仏像を彫る」ということが全くの嘘ではないかも、と思ったのは、
この胡桃の彫刻のことが脳裏にあったからでした。頂いたときはちょっと、
不気味な感じがして、よく見れなかったのだけれど・・・。
亡きナンシーさんを偲んで、この度はじっくりと手にとって見ました。

胡桃彫刻の歌は見つからなかったけれど、胡桃で始まる大好きな歌を。

 胡桃ほどの脳髄をともしまひるまわが白猫に瞑想ありき
               葛原妙子『原牛』

こんにちは。岡部史です。
漫画家・水木しげる氏の出身地・鳥取県境港市には、水木氏が描いた
妖怪たちのブロンズ像の立ち並ぶ、妖怪ロードがあるとのこと。
「塔」の会員で境港市在住の佐々木千代さんは

 ブロンズ像抜け出だしたる<ぬらりひよん>わたしの歩幅に合はせ付きくる
                 佐々木千代「塔2022年9月号・題詠四季」

という愉快な(ちょっと不気味な)歌も詠まれています。

水木しげる氏は上京後、調布市に住居を得て、五十年ほども生活されていました。
それで調布市でも、水木氏にちなんだ建物やオブジェを見ることができます。
次の写真は、深大寺近くの鬼太郎茶屋の前あたりで撮影したもの。

ゲゲゲの鬼太郎とねずみ小僧ですが、角度がわるかったようで、
ふたりとものっぺらぼうに映ってしまいました。これはこれで、怖いかも。

年の暮に仕事なくなりて来て遊ぶ水族館にとおる児の声/田中栄『水明』

「仕事なくなりて」もいろいろだが、〈失業〉という意味だとどうだろう。
最近は各種の施設の入場料もそれなりのお値段になって、ただの暇つぶしに入るには、ちょっとつらい感じでもあるか。
 
ところで、それはつまり水族館の運営にもお金がかかるということで、水槽の水質維持のために酸素を入れたり、フィルターを通して汚れをとったり、そのためにポンプを動かさなければならない。ヒーターや冷却器で温度を調節したりもする。光熱費がどうなるか、この冬の家庭のそれを見ると、水族館も心配になる。
大災害が起これば、水槽の破損がなくても停電のために多くの魚を死なせてしまったりもする。

そういうことがいろいろあるわけだが、水質維持の話に戻すと、これはなかなか人工的な海水だけでは魚の健康を保つことができず、定期的に海水を運んでくる必要があるらしい。

これは大阪・天保山にある「海遊館」の前。湾内クルーズの船つき場があるが、その横に、小型の貨物船ふうの船が停泊していることがある。煙突には海遊館のマークがついている。
この船が沖のほうで新鮮な海水を汲んでくる。

もっと自然の豊かなところなら、すぐそこの海水を汲んだらよいのだろうけれど、なにぶんここは大阪湾。少し遠くまで行って海水を汲んでくることになる。

こちらは東京・池袋。サンシャインシティの裏手に、しばしばこの大型のトラックが停車している。鮮魚輸送車に似ているが、かなり大きい。
どうやらこれも伊豆方面から水族館のために海水を運んでくるものらしい。

水族館も、その舞台裏には、いろいろな仕事がある。
そういうことを想像してみるのも面白い。

別の日。海遊館の「第八先山」が戻ってくるところ。

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