塔短歌会について

ご挨拶

「塔」短歌会は1954年に、高安国世によって結成されました。高安の没後は、永田和宏・河野裕子によりさらに大きく発展し、会員数は1100人以上となりました。 全国に支部があり、歌会が行われています(海外にも会員はいます)。そして毎月、約220ページの短歌誌「塔」を刊行しています。 「塔」には、若者から高齢者まで、幅広く多様な会員がおり、自由な活動を続けています。いろいろなことを質問できる、ベテランの歌人も多いです。まったくの初心者でも安心して参加できる、暖かな雰囲気のある会だと思っています。

短歌は、31音というわずかな音数で自己を表現する詩型です。言いたいことをすべて述べることはできません。そのため、文字にされていない思いを、深く受け止めることができる読者が必要となります。批評が、非常に重要になるわけです。 「塔」では、お互いに自由な感性で批評し合うことによって、短歌をより豊かに味わい、高めてゆくことを目標としています。 「塔」に入会すれば、毎月10首以内の歌を投稿することができます。優れた作品や問題作は、さまざまな批評を受けることになるでしょう。ただ、このシステムが成立するためには、あなたも、他人の作品に対して、積極的に批評していくことが求められます。共同して歌を批評し合うという精神が、「塔」を支えています。 批評、というと難しそうですが、そうではなく、歌を読んで自分が感じたことや考えたことを、わかりやすく伝えていこうという思いがあれば十分です。

また、短歌は、長く作り続けることが大切です。毎月作った歌を「塔」に発表することで、かけがえのない生の時間を、新鮮な言葉として留めていくことができます。10年、20年、30年以上と「塔」に参加することは、あなたの人生を必ず豊かなものにしていくと信じています。 短歌は、ささやかな詩型ですが、長い歴史をもち、奥が深く、かぎりない可能性を秘めています。短歌に関心をもたれた方は、「塔」に参加されることをお勧めします。あなたが、私たちとともに、新しい短歌を創り出していくことを願っています。

「塔」主宰  吉川宏志

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吉川 宏志

1969年、宮崎県東郷町生まれ。1987年、「京大短歌」に参加。「塔」入会。歌集に『青蝉』(現代歌人協会賞)、『海雨』(山本健吉文学賞・寺山修司短歌賞)、『燕麦』(前川佐美雄賞)など。歌書に『風景と実感』がある。京都市左京区在住。

■自選3首

・風を浴びきりきり舞いの曼珠沙華 抱きたさはときに逢いたさを越ゆ 『青蝉』

・花水木の道があれより長くても短くても愛を告げられなかった 『青蝉』

・夕雲は蛇行しており原子炉技師ワレリー・ホデムチュク遺体無し 『夜光』

概要

塔短歌会は、故高安国世(京都大学教授、ドイツ文学)によって、昭和29年に創設され、月刊誌「塔」を発行しております。高安の死後、永田和宏が主宰を継ぎ、2015年からは吉川宏志が主宰となりました。この数年、続けて新人賞作家を輩出するなど、活発な活動を展開しております。会員数は1100名余、小学生から90歳以上の方まで、また、沖縄から北海道さらに海外まで、年齢的にも地域的にも幅広い会員を擁しております。「塔」は、創刊以来の自由な気風がモットーであり、それを反映して、大学生を中心に、会員の約一割を占める20~30代の若い歌人の活躍が、大きな特徴であり、また注目を集めております。2017年4月から一般社団法人になりました。

発足の言葉

僕たちは短歌を愛して集った。そして僕たちの考える短歌には自らその伝統があり規制がある。しかし僕たちはただ先人によって示された道を、芸道のように踏襲するだけで足れりとするものではない。時代時代によって人間の精神も異ることは歴史を顧れば明らかである。或る時代に確立した文学精神を模倣することに終始するのは愚である。僕たちは短歌の、抒情詩の根源に参入すると同時に、絶えず前代の批判と新しい精神への飛躍を志さねばならぬ。僕たち自身が既に来るべき次代によって批判されねばならぬ。信頼をもって集った者同志の、こうした自由な精神の交流を僕たちはここに期待する。広く豊かな心を養って、僕たちはこの困難な時期に、生活に光と力をあらしめたい。また僕たちの短歌が、常に真実を見ぬく力と、虚飾ない美の感覚とを喚起することを疑わない。

1954年高安 国世

選者の紹介

  • 永田 和宏

    1947年滋賀生まれ。「京大短歌会」で高安国世に出会い「塔」入会。歌集に『饗庭』(若山牧水賞、読売文学賞)『風位』(迢空賞、芸術選奨文部科学大臣賞)など、評論集に『表現の吃水』など。朝日歌壇選者、宮中歌会始詠進歌選者、紫綬褒章受章、講談社エッセイ賞受賞など。京都大学名誉教授。京都産業大学総合生命科学部教授。

  • 花山多佳子

    1948年東京生まれ。昭和43年「塔短歌会」入会。河北新報「河北歌壇」選者。NHK学園「友の会」選者。歌集に『樹の下の椅子』『草舟』(ながらみ現代短歌賞)、『空合』、『木香薔薇』(斎藤茂吉短歌文学賞)、『胡瓜草』(小野市詩歌文学賞)、現代短歌文庫『花山多佳子歌集』『続花山多佳子歌集』。
    ■自選3首
    ・しかたなく洗面器に水をはりている今日もむごたらしき青天なれば 『樹の下の椅子』
    ・プリクラのシールになつて落ちてゐるむすめを見たり風吹く畳に 『空合』
    ・大根を探しにゆけば大根は夜の電柱に立てかけてあり 『木香薔薇』

  • 栗木 京子

    1954年名古屋市生まれ。大学在学中に短歌と出会い高安国世に師事。歌集に『夏のうしろ』(読売文学賞・若山牧水賞)、『けむり水晶』(迢空賞・芸術選奨文部科学大臣賞)、『水仙の章』(斎藤茂吉短歌文学賞・前川佐美雄賞、紫綬褒章)など。歌書に『名歌集探訪』『現代女性秀歌』など。読売歌壇、婦人公論短歌欄、NHK学園友の会などの選者。
    ■自選3首
    ・観覧車回れよ回れ想ひ出は君には一日(ひとひ)我には一生(ひとよ)『水惑星』
    ・音出さぬときレコードは垂直に立てられて夜の風を聴きをり 『夏のうしろ』
    ・まはしつつ電球はづすゆふぐれは足首細き少女にもどる 『水仙の章』

  • 真中 朋久

    1964年生まれ。茨城県出身。1991年に「塔」入会、歌集『雨裂』(2001年)により現代歌人協会賞。歌集は他に『エウラキロン』(2004年)、『重力』(2009年)により寺山修司短歌賞受賞。『エフライムの岸』(2013年)。朝日カルチャーセンター講師、毎日新聞「兵庫文芸」選者。気象予報士。
    ■自選3首
    ・君が火を打てばいちめん火の海となるのであらう枯野だ俺は  『雨裂』
    ・そのかみの使徒の旅程をたどりたり海荒るる章は読み返しつつ  『エウラキロン』
    ・直言をせぬは蔑するに近きこととかつて思ひき今もしか思ふ  『重力』

  • 三井 修

    1948年石川県生まれ。歌集に『砂の詩学』(現代歌人協会賞受賞)『洪水伝説』『アステカの王』『現代短歌文庫・三井修歌集』『風紋の島』(日本歌人クラブ賞受賞)『軌跡』『砂幸彦』『海図』(島木赤彦文学賞)、歌書に『永田和宏の歌』。北陸中日新聞選者。
    ■自選3首
    ・ハンドルの半ばを砂に埋めたる自転車があり肋のごとくに
    ・自らの軌跡を見つつ航くことの淋しもよ夏のボートの青年
    ・おそなつの地磁気の間(あい)を幽(かす)かなる力もて蝶は渡りゆくなり

  • 山下 洋

    1953年京都府生まれ。1977年故・工藤大悟に誘われ京大短歌会入会。翌年塔入会。歌集に『たこやき』『オリオンの横顔』『屋根にのぼる』。編書に工藤大悟作品集『紫紺海小曲集』。
    ■自選3首
    ・向こう岸にもぼくがいて呆然と見ているような冬河である
    ・帰りきて制服のまま寝入りたる少年は雨の匂いをまとう
    ・何かになろうとして生きてきた訳じゃない桜紅葉を見上げて思う

  • 前田 康子

    1966年伊丹市生まれ。大学で現代短歌の講義を聴いて短歌を始める。歌集に『ねむそうな木』『色水』『黄あやめの頃』『窓の匂い』など。近鉄文化サロン講師、八幡市短歌部会講師、伊丹歌人クラブ講師、「月刊大老連」選者。
    ■自選3首
    ・骨格だけ大きな息子だったのだ近寄ればすうと抜ける秋風
    ・疲れ果て眠る夫にかける呪文ツルウメモドキサルトリイバラ
    ・わが腕を唐突に打つ野あざみの 激しさならばまだ胸にある

  • 永田 淳

    1973年滋賀生まれ。1987年塔入会。歌集に『1/125秒』(現代歌人集会賞)『湖をさがす』。朝日カルチャー京都教室講師、京都造形芸術大学非常勤講師。
    ■自選3首
    ・可視光線可聴音域真実は落葉の上につもりゆくべし 『1/125秒』
    ・そしてまた湖を探しにゆくだろうこくりと骨を鳴らしてのちに 『湖をさがす』
    ・背伸びして腕をのばせば星がまだつかめた頃の話をしようか 『湖をさがす』

  • 小林信也

    1954年群馬県生まれ。1996年塔短歌会入会。2001年第12回歌壇賞受賞。歌集に『千里丘陵』(関西短歌文学賞)、『合成風速』。
    ■自選3首
    ・「大阪でがんばっている父さんへ」さうか俺はがんばつてゐるか
    ・君の手の小さかつたことを思ひ出す今も小さなその手を取れば
    ・「賛成」のデモに集へり我もまた平和願ふに相違なければ

  • 山下 泉

    1955年大阪府堺市に生まれた。大学では歌人・ドイツ文学者の高安国世の指導を受けた。1980年「塔」入会。歌集に『光の引用』(現代歌人集会賞受賞)『海の額と夜の頬』。                          
    ■自選三首
    ・海に向くテーブルを恋う姉妹いて一人はリュート一人は木霊 『光の引用』
    ・身体の冥府とおもう脳髄を掲げて歩む百合の影まで 『光の引用』
    ・美しきパン屋にくればふっくらと金貨をつかうかなしみあらん 『海の額と夜の頬』

  • なみの亜子

    1963年愛知県生まれ。99年「塔」入会。歌集に『鳴』『ばんどり』『バード・バード』(葛原妙子賞)『「ロフ」と言うとき』。評論に「塔」創刊50周年記念評論賞、現代短歌評論賞。「大阪よみうり文化センター」〈現代短歌講座〉講師。
    ■自選三首
    ・犬はまだ海を知らない 小さき橋渡って渡りかえしてあそぶ 『ばんどり』
    ・ほおうほおうと夜を啼く鳥寝ねぎわのわたしにほそくひらかれる喉 『バード・バード』
    ・なお人に残されているものとして木の間木の間を満たす秋の陽 『「ロフ」と言うとき』

  • 梶原さい子

    1971年宮城県気仙沼市生まれ。河野裕子に出会い歌を詠み始める。1998年塔短歌会入会。歌集に『ざらめ』『あふむけ』『リアス/椿』(葛原妙子賞)『ナラティブ』『現代短歌文庫 梶原さい子歌集』。第1回塔短歌会賞、現代短歌評論賞等受賞。朝日新聞みちのく歌壇選者。
    ■自選三首
    ・靴洗ふ春のまひるに沈めても沈めても浮くあかるきエロス 『ざらめ』
    ・それでも朝は来ることをやめぬ 泥の乾(ひ)るひとつひとつの入り江の奥に 『リアス/椿』
    ・波がここまで来たんですかといふ問ひが百万遍あり百万遍答ふ 『ナラティブ』

  • 岡部 史

    1951年山形県生まれ。1983年「塔」入会。歌集に『コットン・ドリーム』『宇宙卵』『韃靼の羊』『海の琥珀』、歌書に『郷土菓子のうた』等の他、児童書の創作・翻訳書等がある。第45回、46回角川短歌賞最終候補。訳書『魔女図鑑』により第三回けんぶち絵本の里大賞受賞。
    自選三首
    ・あばらなんて寒い名前の骨だわねそのさむさのまま抱かれている『コットン・ドリーム』
    ・眼窩にしろく砂溜めてをりいついかにたれを愛せし生きものの果て『韃靼の羊』
    ・漕ぐほどに寂しいブランコ 夕焼けの向かうの国より蹴り返されて『海の琥珀』

  • 村上和子

    村上和子(むらかみかずこ)1951年東京都生まれ。2001年塔短歌会入会(「人短歌会」「笛の会」を経て)。歌集に『銀の弦』『ものはら』『しろがね』。
    ■自選三首
    ・一本の銀の弦黒き玻璃の中張られて冬は四角く響く『銀の弦』
    ・実らざるプレゼンテーション会議より退きて空車の近づくを待つ『ものはら』
    ・思ひ出に力はありて日日(にちにち)の坂道のぼるわれを支ふる『しろがね』

月刊誌「塔」のご紹介

毎月、会員から寄せられた短歌を、選者が選をして掲載しています。他にも、主宰が選出した作品を紹介する「新樹集」「百葉箱」や、特集、評論など充実した内容となっています。

会員向けに毎月送付されるほか、ジュンク堂池袋本店(東京)、 ちくさ正文館本店(名古屋)、葉ね文庫(大阪)で一般向けにも販売しています(1250円)。

「塔」のバックナンバーは「日本近代文学館」(東京)と「日本現代詩歌文学館」(岩手)に全号収蔵されています。また、1998年以降の分につきましては「国立国会図書館」(東京)にもあります。

作品欄作品は、月集・作品1・作品2・若葉集に分かれています。新しく入会された方は1年間、若葉集へ掲載されます。若葉集の欄は、13名の選者が交代で選を行ない、選歌後記をつけて掲載します。各欄のイラスト2ケ所の前と後にその月の優秀作品が置かれています。

 月集選者   永田和宏・花山多佳子・栗木京子・真中朋久
 作品1・作品2・若葉集選者  永田和宏・花山多佳子・栗木京子・真中朋久・小林幸子・
  三井 修・山下 洋・前田康子・永田 淳・小林信也・山下 泉・なみの亜子・梶原さい子
新樹集
百葉集
毎月の作品1・作品2・若葉集の全作品から、主宰が新樹集(10名)と百葉集(20首)を選出します。
風炎集表題つき20首。編集部からの依頼によるもの。
特別作品自主投稿作品。表題つき15首以上。13名の選者が交代で選歌する。
評論現代短歌論、近代短歌論、古典研究、歌人論など。自主投稿を歓迎しています。
方舟自主投稿によるエッセイ欄。
時評短歌時評、誌面時評など。
書評会員歌集についての批評、近刊歌集の紹介など。
作品評前々月の作品の批評欄。合評も含めて約30ページと充実しています。

「若葉集」について

塔短歌会の歌誌には「若葉集」という欄があります。これは、他の結社・歌誌には見られない独特なものです。これから本格的に短歌をはじめてみたいという方には最適なシステムです。
  • 若葉集の趣旨

    永田和宏(当時主宰)2005年1月号より

    お気づきのことと思うが、このところ毎月の誌上で新人の歌がきわめて多く、毎月の選歌をしていてもなかなかその歌と名前を覚えることができない。これだけ新人が多いのは活気のある証拠でうれしいことであるが、せっかく新しい仲間が加わったのだから、その新しい顔と作品をみんなに注目して欲しいと思うのである。このような思いから、本年四月号より、入会一年目のニューフェースだけの欄を新設することにした。 「新樹集」「百葉集」に準じて「若葉集」と名づけることにする。初投稿から一年間だけ、この欄に入ってもらってお披露目をしようと、そしてその間に、みんなに名前と歌を覚えてもらおうというわけである。同期という存在はいつまでたっても特別な思いがあるわけだが、この同じ欄に名前を連ねることによって、同期という仲間意識も、そしてライバル意識も育っていくといいだろう。
  • 若葉集のメリット

    塔短歌会には現在約1,100名を超える会員が所属し、毎月の歌誌に投稿しています。そのような中では、上記説明のとおりどうしても埋没してしまって、「せっかく入会したのに」と孤独を感じてしまうかもしれません。その点、「若葉集」というのは、入会した1年目の間に所属する欄のことです。これにより入会1年目の間は、入会1年目の人たちばかりの欄の中で選者に選歌してもらうことになります。逆に言えば、若葉集という欄を見れば、すべて入会して1年未満の方なのだとどの会員からも分かるわけです。 また、毎月の選歌の後に書かれる、選歌の評の記載分量も他の欄の2倍(自分の歌が取り上げられる可能性が2倍)になっています。

添削指導

塔短歌会には「添削部」があります。添削を希望される方には、5首以内で添削の依頼をしていただけます。 詳細は、月刊誌「塔」内にある「添削指導のご案内」をご覧ください。
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