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アーカイブ "2010年03月"

ベランダの木香薔薇に蕾がたくさんついています。
以前、脚を怪我していたときに京都の府立植物園で木香薔薇を見ました。
車椅子に座って見たので上から垂れ下がってくる花に圧倒されました。
それから手に入れ、育てているのですが、薔薇の中でも育てやすい方だと思います。
車椅子と言えば
道ばたのおいらん草の種採るとしばしとどめつわが車椅子
という宮柊二の歌がすごく好きです。宮柊二の植物の歌は初期からたくさんあって、種を採っている歌が何首かあります。
おいらん草も木香薔薇も花山多佳子さんの歌集名にありますね・・・。
三月の和歌山歌会では、みなさまにお世話になりました。楽しかったです。
(子育ての相談などにものっていただいてありがとうございました。)

「京大短歌」16号を読む。15号が出たのが2005年2月というから、丸5年ぶりである。
 レシートを対岸の陽に透かしては目を見てものを言いたくおもう
 風のない史跡を歩む 寡黙なら寡黙のままでいいはずなのに
        /大森静佳
 紙のおもての文字の突起をなでながらいま流れゆく鴨川を思う
 まっしろな栞を本にしずめつつああそうだよね、そうだねと言う
        /藪内亮輔
 二駅を歩いて帰る しずしずと愛されるために脂肪を燃やす
 得たものはやがて失うものだから今夜サガンに手紙を書くよ
        /川島信敬
 音声がまず劣化する ふわふわと輝く舌は覚えているのに
 帰ろうと君が言うのを待っている動物園にとめどなく雨
        /東郷真波
自分の好きな歌を引いていくと、静かな歌が多くなってしまう。実験的な歌や賑やかな歌も載っているのだけど。

田中栄さんの遺歌集『海峡の光』には、岬町の身近な風景を詠んだ歌が数多くある。田中さんのお宅を訪ねた後に読むと、一層心にしみる。
  冬海の岸に溜まれる水澄みて今日も映せり妻との歩み
  港のうち繋がれし漁船きしみつつ積まれし蛸壺に冬の日がさす
  定期航路なくなりし港しずまりて水母漂う西日に透きて
  わが歩行の町なかにある鉄工所いつか閉され赤銹流す
  廃線になるかも知れずふるさとの鉄路のうえを歩く鶺鴒

南海多奈川線は、みさき公園駅〜多奈川駅の2.6キロの短い路線。2両編成のワンマン電車が往復運転をしている。途中に深日町駅、深日港駅の二駅があり、かつてはこの深日港(ふけこう)から淡路島や徳島へ向かう定期船が出ていたそうだ。
『海峡の光』(3500円)はまだ在庫があるので、お読みになりたい方はお知らせ下さい。

大阪府泉南郡岬町にある田中栄さんのお宅を訪ねる。京都から電車を乗り継いで約2時間半。春らしい良い天気になった。「塔」の選者だった田中さんが亡くなって丸5年。86歳になるという奥さんはお元気そうだった。
命日が過ぎたばかりということもあってか、お仏壇にはきれいなお花がたくさん飾られていた。お焼香を済ませた後、本棚を見せていただき土屋文明関連の本を何冊かお借りする。短歌関係以外にも俳句や詩・小説など、所狭しと本が並んでいる。

写真は南海多奈川線の終着多奈川駅。田中さんのお宅の最寄り駅である。

今日の午後は森井マスミさんの『ちろりに過ぐる』の批評会。
家から自転車で5分の弁天町にて。
弁天町は近い駅なのに、あまりご近所さんに出会わない。
ご近所さんはみんな、他のふたつの最寄駅に分散するらしい。
そういうわけで、弁天町はひとりでくつろげるカフェがいくつかある。
歌会にしろシンポジウムにしろ、だいたいいつも
電車で1時間以上のところばかりなので、
短歌の会が自分住む町であるというのは不思議だ。
塔でいうと、京都に住む方々はいつもこんな感じなのだろうか。
今日の批評会は、別の打合せが入ってしまったので
後ろ髪をひかれながら途中退席、失礼した。
午後8時頃、梅田駅で打合せを終え、ふたたび弁天町に戻ると
お昼間の批評会に出席されていた島田修三さんと魚村晋太郎さんにばったり。
「大阪の江戸さんなんだなぁ」なんていわれながらごあいさつ。
そこから、疾風のごとく自転車を飛ばして帰った。

 日ごと見るドイツのこよみ三月の二十七日と三十日あかし
         二宮冬鳥『昨夢集』
二宮冬鳥は大正2年生まれの医師で歌人。高安さんと同じ年の生まれだ。久留米医大教授などを歴任したのち、平成8年に亡くなっている。昨年『二宮冬鳥全歌集』が出たところ。
「あかし」とあるのでドイツの祝日について調べてみたところ、この歌はどうやら復活祭(イースター)に関係があるらしい。復活祭は「春分の日の後の最初の満月の次の日曜日」と決まっているため、年によって日が変わる。
この歌の年は、3月29日が復活祭だったのだろう。ドイツでは復活祭当日だけでなく、復活祭の前々日の金曜日と、復活祭翌日の月曜日が祝日となる。こう書くとややこしいが、要するに金曜日から月曜日まで4連休になるわけだ。
ちなみに今年の復活祭は4月4日とのこと。

 しばらく雨が続いていてほうっていたら、豆がぐんぐん伸びていました。あおい葉っぱに光があたってそこだけが別の世界のように思えました。いたるところに別の世界の入り口はあるのですね。
あたたかく血に沁み透る朝光(かげ)に緑渦巻くわれは羊歯叢(むら)
堕ちゆきし小鳥らのふと見えずなる何なきひとところ見つめていたり
目に見えぬ船たおやかに近づくと微かにきしむ白き桟橋
                     (高安国世『朝から朝』)

雨の一日です。
HP更新担当の永田です。
以前にも呼びかけましたが、ご自分のHPもしくはブログなどをお持ちの会員の方でリンクをご希望の方はお申し出下さい。リンクをはらせていただきます。本日、二つ追加しました。
また、過去の塔誌上の記事をお読みになりたい会員外の方がおられましたら、ブログコメントもしくは掲示板に書き込みをお願いします。その場合は「○月号の△×□の記事」といったように記入してください。当該記事が分からないけれども、短歌総合誌や新聞紙上などで取り上げられていたという記事に関しては、そのメディアの具体的な情報をお書き下さい。
ご希望のあった記事で、テキストデータが残っているものに関しては、随時【短歌誌「塔」】→【塔 アーカイブ】にアップしていきます。
ちなみに「八角堂便り」や「塔アーカイブ」のアップは溝川さんにお願いしています。
最後にもう一つお願い。ブログはすべて個人が特定できる名前で書き込みをしております。コメントを残される方も、出来ましたら誌上名などでの書き込みをお願いします。その方が無責任なコメントを避けられるからと考えるからです。

3月19日付の松村由利子さんのブログに「アボカド」という文章が載っていた。その中で「アボカド」のことを「アボガド」と言う人が多いが、正しくは「アボカド」であるという内容のことが書かれている。
http://soratanka.seesaa.net/
それを読んだ翌日20日の旧月歌会に、まさにその「アボガド」の歌が出ていてびっくり。歌会でも「アボガド」でなく「アボカド」が正しいという話になった。こういう偶然は面白い。
偶然について、もう一つ。
先日届いた角川「短歌」4月号の特集は「短歌の世界を広げるこの31冊」。31冊というのは短歌の31文字にかけているのかと思ったら、そうではなかった。編集後記を読むと8冊×4名=32冊の予定であったのが、1冊重複があって31冊になったとのこと。確かに前月号に載っている広告を見ると「短歌の世界を広げる32冊」となっている。これも偶然の力と言うべきか。

先日、百万遍の交差点を通った。永田さんの歌集に『百万遍界隈』という題名があるように、京都大学のキャンパスに面した学生街である。この時期、交差点の石垣に数多くのクラブ・サークルの新入生勧誘の立て看板が並んでいるのだが、その中にこういうのがあった。

 入っただけなら3000人
                     京都大学アメリカンフットボール部」
何の勧誘の言葉も書かれていないのに、みごとに新勧の役割を果たしている。省略のよく効いた表現に、思わず感心してしまった。

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