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アーカイブ "2025年05月"

 2025年5月31日(土)・6月1日(日)の両日に開催される「塔短歌会全国大会 in 横浜2025」では、2日目の6月1日(日)13時より、「短歌と共に生きる」をテーマとし、公開のシンポジウムを行います。

 このシンポジウムについて、若干ながらお席に余裕がございます。

 ついては、事前申し込み無しでの当日ご参加も可能ですので、ご都合の合う方はぜひともいらしてください。

 初夏の横浜で短歌の話をしましょう!

                  記

1. 日時    2025年6月1日 13:00~16:30(12:15開場予定)
2. 場所    ワークピア横浜(神奈川県横浜市中区山下町24-1)
         https://workpia.or.jp/
3. 参加費   2,000円(当日会場受付で申し受けます。)
4. プログラム 13:00~13:10 オープニング 吉川宏志
         13:10~14:30 対談 馬場あき子×永田和宏
         14:30~14:50 休憩
         14:50~16:20 座談会
         大森静佳・竹内亮・なみの亜子(司会)・森山緋紗
        「新仮名から旧仮名へ―永田和宏のメタモルフォーゼ―」
         16:20~16:30 クロージング 小林信也

                                 以上

 

こんにちは。こんばんは。
鳥取の荻原伸です。

塔のこのHPを探ってみると、以下のように「杉原一司」についての文章がみつかります。

【八角堂便り】三度目の出会い / 小林 幸子
2012年4月号
【八角堂便り】筬を離しぬ / 小林 幸子
2017年12月号
【八角堂便り】杉原令子の歌 / 小林 幸子
2021年1月号
【短歌時評】運用と手順・杉原一司 / 吉田 恭大
2020年4月号
【塔ブログ】疎開を急ぐ佐美雄 / 荻原伸
2022.03.03
【塔ブログ】丹比の夜 / 荻原伸
2022.03.05

今年2月下旬に『杉原一司全集【歌文・対談座談会篇】』という一冊が鳥取の今井出版というところから出ました。この出版には、地元の鳥取大学の研究者の方々が深く関わっておられます。近年、鳥取大学地域学部の岡村知子准教授らは、前川佐美雄や塚本邦雄との往復書簡からなる2冊の重要な資料集を出版なさっています。実物の手紙を写真にとったものと実際の文字を翻刻した文字が入っています。
『杉原一司宛前川佐美雄書簡』(非売品)
『杉原一司塚本邦雄往復書簡』(キンドル版のみ販売)

今回の全集には、杉原一司が『やまと』に投稿していた次の歌なども収録されています。

あの山もこの山もみな翳をもち思ひ深深息づきて見ゆ

先の佐美雄との往復書簡によれば、投稿は二ヶ月前には行っているようなので、一司の住む丹比から、若桜や八東の山々の濃く深まる初夏の緑を目に映しながら、「翳」を表現しつつ全体はなんとなく(作品自体が上の句と下の句ということではなく)縦にぱかっと2つに割れるようなシンメトリー風に作っている感じもしてきます。

4月号から 連載「塔」を読む が始まった。
創刊70周年記念号(2024年4月号)では「創刊初期の「塔」を読む」という特集を行った。創刊の1954年から5年分の「塔」を読み、各年秀歌20首選をし、その年の誌面の様子を振り返るエッセイをつける、というものだ。これを連載化したのが「「塔」を読む」で、記念号特集の続きの1959年から高安国世が亡くなる1984年まで、毎号1年分ずつ読んでいく。執筆者は毎回変わる。

私は今年の5月号で1960年を担当したが、これがまあ大変な年で安保闘争のまっただなかだ。清原日出夫の「不戦祭」が掲載されている(2・3月合併号)。誌面では「生活と政治」というテーマで特集や寄稿が行われ、短歌にはまったく触れることなく、「生活と政治」が論じられていたりする。「教科書問題」を取り上げて、会員が意見を寄稿していたりする。「塔」という結社が、短歌を核として集いつつ、短歌にとどまらない、社会にコミットする「共同体」として機能していたことが伝わってくる。

そんな中、勝藤猛の歌に立ちどまった。

 雪の原ポプラ枯木のひろがりて午にはパンの匂い流れ来  (4月号)

 日本皇子誕生を告ぐるパシュト語紙幾部も買いて昂りている (5月号)

 ロシア人道路工夫ら休日をカーブルへアメリカ映画見に来る (7月号)

 雨期過ぎし大気に踊る言葉らの幾ばくか我に親しくなりぬ (7月号)

 草原のこの町暗く眠りゆき銀河の落つるあたりソ連か (12月号)

勝藤のところに来ると、誌面に違う空気が流れる。勝藤のエッセイ「カーブルの冬」(4月号)によると、その前年(1959年)に「パシュト語」を学ぶためにアフガニスタンの首都「カーブル」へ渡り、そこの大学の文学部で学んでいたらしい。ウィキペディアの情報が正しければ1931年生まれで、アフガニスタンに渡ったのは29歳前後と思われる。彼はのちに東洋史学者、ペルシア語学者として大学教授になった。1954年京都大学文学部卒業らしいので、どこかで高安国世と接点があったのか。あるいは別のつながりがあって「塔」に関わることになったのか。バックナンバーをさかのぼれば分かるかもしれない。

勝藤猛という人そのものも興味深いが、彼の歌に立ち止まったのは、ここに、私たちの知らないアフガニスタンがある、と思わせられたからだろう。パンの匂いや新聞、アメリカの作品を上映する映画館、大学で言葉を学ぶ日々、銀河の下に寝静まる町。そういう日常が1960年のアフガニスタンにはあったのだ。

今、日本の外務省の海外安全ホームページでアフガニスタンの「危険情報」を開けば、その地図は赤く塗られている。すなわち危険度レベル4、「退避勧告」が出ており、どのような目的であれ渡航は止めるようにと書かれている。「アフガニスタン」と「留学」がイメージのうえでまったく結びつかない、そんな世界で生きている者の感覚からすると、勝藤の歌は夢幻というのか、信じられないような思いで、しかし大切なものを目撃しているような思いで、読ませられる。

岡部史です、こんにちは。

国際タンカ協会(ITS)が年に二度発行している機関紙の最新の17号に
素敵な短歌とその英訳を、見つけました。
作者の川上幸子さん(短歌人)の許可を得て、転載させて頂きます。
実は仏語訳も併記されているのですが、少し長くなってしまうので、
残念ながらここでは割愛させて頂きました。

本多稜さんの最新歌集『時剋』は、「塔」五月号の短歌時評で、小林真代
さんも取り上げておられるので、併せてお読みください。

花と星と鳥と
Flower, Star, and Bird
             川上幸子訳
             tr. by Yukiko Kawakami

嘘いくついいわけいくつ吐きて来しくちびるに花花は紫陽花 
藤原龍一郎『夢みる頃を過ぎても』
how many lies
how many excuses
have these lips made up?
a flower to the lips
the flower is a hydrangea

星いくつ転移はいくつ病院の診察券がまた一つ増ゆ 本多 稜『時剋』  
how many stars,
how many metastases
have I got?
again I have got
another patient ID card

牧水の白鳥(しらとり)いくつ恋いくつ一つと疑はざりし若き日  川上幸子
how many white birds or
how many loves were there
for Bokusui?
it must have been only one ―
I never doubted it in my youth

英訳の方を読んでいると、私はボブ・ディランの「風に吹かれて」
を思い出してしまいます。高校生の頃に聞いた、ジョーン・バエズの声の
方で、ですが・・・。

来る7月5日(土)名古屋にて
現代歌人集会春季大会が開催されます
「山中智恵子のうたー生誕100年」と題しまして
今野寿美氏の講演「雪降るさらば明日も降りなむ
         ー哀惜する心の永遠」
パネルディスカッション「山中智恵子のうたを読む」
         中津昌子氏(かりん)
         楠 誓英氏(アララギ派・ヤママユ)
         辻 聡之氏(かりん)
         立花 開氏(まひる野)
と、豪華メンバーにご登壇いただきます。

現代歌人集会会員でなくてもご参加いただけます。
場所は名古屋市中小企業振興会館(吹上ホール)4階第七会議室です。

関西からも関東からも近い名古屋!
ぜひお誘い合わせの上お越しください。
お申し込みは永田淳さんまで(info☆seijisya.com)☆を@に変えて送ってください。
当日参加も可能です。
皆様、名古屋でお会いしましょう!

行きて負ふかなしみぞここ鳥髪に雪降る
  さらば明日も降りなむ 山中智恵子

若夏の水がにほへばわたすげの
  風にしたがふこころゆかしも 今野寿美

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