『池本一郎歌集』(松村)
砂子屋書房の現代短歌文庫の一冊として『池本一郎歌集』が刊行された。池本さんの第一歌集『未明の翼』が完本で収録されているほか、第二から第五歌集までの抄録、歌論・エッセイなどが載っており、歌人池本一郎の全体像を知るのに好適な本となっている。
1970年刊行の『未明の翼』は、池本さんの20代の作品を集めた第一歌集である。実は今回初めて読んだのだが、印象に残る歌がいくつもある。
村々はなべて死にたる炎天のかの午後妹を水に葬(まつ)りし
砂ぼこり立つボックスの外に来て首のない犬 電話をのぞく
深夜放送終らん画面なでている竪琴(ハープ)の白き指去りがたし
早春の海荒れており傾斜せる漁村にバスは下りて行きぬ
産みてより姉に棲みゆくやさしさと短き手紙くりかえし読む
右舷深くしずめつつ右に旋回せし艦しなわせて潮鳴り起る
馬並び消えし溶暗のシーンあり出でて白昼の交差路わたる
裏表紙の写真は上崎智旦さんの撮ったもの。巻末に花山さんが書き下ろしの「池本一郎論」を寄せている。皆さん、どうぞお読み下さい。
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