とゆ(松村)
高安国世の『一瞬の夏』の中にこんな歌があった。
とゆのなき屋根よりくだる滴りの不規則にして夕くらみゆく
初句にある「とゆ」は樋のこと。雨樋のない屋根から不規則に雨垂れが落ちてきて、いつしか外は夕闇が濃くなってゆく、という感じだろう。「夏山の雨」という一連にある歌で、おそらく長野の飯綱高原にある山荘での場面。
「樋(とい)」のことを「とゆ」と言うのは、関西の言葉だろうか。京都に住むようになってから、時々耳にする言い方だ。いわゆる関西弁として有名なものよりも、こうした日常的な言葉の違いの方が、初めて聞いた時にはびっくりする。他には、例えば「かしわ」(=鶏肉)とか「お米をかす」(=お米を研いで浸す)など。初めて聞いた時には、「??」となってしまった。
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