ブログ

全歌集にはたいてい巻末に初句索引というものが付いている。これを眺めているとけっこう面白い。例えば『高安国世全歌集』の初句索引を見ていると、高安の言葉の好みというものがよくわかる。
「しずかなる/しづかなる/静かなる」を初句に持つ歌が実に22首もある。しかも全13歌集のうち10歌集にあって、初期から晩期までほぼ一貫して使われていることがわかる。「かすかなる/微かなる」も似たようなもので、全部で18首、11歌集にある。
面白いのは、どちらも第六歌集『北極飛行』には用例がないこと。これは『北極飛行』の収録歌数が184首と少ないためでもあるだろう。ただ、それだけではなく、ドイツを中心とした海外の風景に「しずかなる」「かすかなる」といった言葉が合わなかったという理由もあるのではないだろうか。
「からまつの/落葉松の」が初句の歌も18首ある。これには偏りがあって、全13歌集のうち『新樹』『一瞬の夏』『湖に架かる橋』『光の春』という後期4歌集だけに登場する。これは、もちろん1972年に長野の飯綱高原に山荘を構えたことによるものだ。
このように、初句索引を眺めているだけでも、ぼんやりとその歌人の足跡が見えてくるのである。

コメントを残す

ページトップへ