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愛媛県を代表する民謡に「伊予節」というものがある。

伊予の松山名物名所
三津の朝市 道後の湯
音に名高き五色素麺 十六日の初桜
吉田さし桃 小杜若
高井の里のていれぎや
紫井戸や片目鮒
薄墨桜や緋の蕪
チョイト 伊予絣

松山の名物名所を列挙した中に、前回取り上げた「ていれぎ」も、もちろん入っている。
「十六日の初桜」というのは早咲きのヤマザクラのことで、旧歴の正月16日頃に咲くことから「十六日桜」と呼ばれるようになったらしい。「うそのような十六日桜咲きにけり」という句が子規にある。この十六日桜のことを文明も歌に詠んでいる。
  伊予の国は十六日桜咲くころか我が菜をしひたぐる朝々の霜
              『青南集』
  伊予の友よ年の始のいとまあらば十六日桜のことも告げてよ
              『続々青南集』
東京にいて、遠く松山の十六日桜のことを思っている歌である。
文明と松山の関係は、実はけっこう深い。これは一つには、松山が文明の先生筋にあたる子規のふるさとであるからだ。
  正岡の升(のぼる)さんあり子規あり就中我が命寄る竹の里人
              『自流泉』
  数ならぬ末なりながら竹の里人につながる思ひ伊予を恋ひ恋ふ
              『青南集』
といった歌に子規への思いは詠われている。もっとも、子規は1902年、文明が12歳の時に亡くなっているので、文明は子規に直接会ったことはない。(つづく)

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