潔癖な雰囲気(松村)
7月6日のブログに吉川さんが、20年前の「塔」には「良くも悪くも、潔癖な雰囲気があったわけですね」とコメントを寄せてくださった。
これは、当時の誌面を読んでいると、随所に感じられることである。例えば「塔」1991年11月号の誌面時評を少し引用してみよう。
こうして、作品欄とはまた違った期待をもって「編集後記」を読んでいるのだが、時に少々がっかりさせられることがある。それはあまりにも個人的なお喋りに過ぎないものを読まされることである。ダイニングルームのある掘出し物のアパートに引っ越したとか、長かった髪をショートにしたとか、その外にも。アイドル歌手の消息に一喜一憂するような興味を、私は塔の人たちにもってはいない。誰かに興味をもち、ファンになるのはあくまで、その人のうたや文章を通してである。
荻野由紀子さんの文章だ。なかなか手厳しい。まさに潔癖である。
現在の「塔」の編集後記は、その頃よりもさらに一段とくだけたものになっている。それは20年という時代の移り変わりや「塔」の変化をよく示していて、別に悪いことだとは思わない。
ただ、かつて、こういう「潔癖な雰囲気」があったということも、どこかに忘れずに覚えておきたいとも思うのである。
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