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昨日、吉澤ゆう子さんの歌集『緑を揺らす』の批評会に
パネルディスカッションの司会として参加しました。
パネラーの佐伯裕子さん(未来)、富田睦子さん(まひる野)、
真中朋久さんをはじめとして、
歌集の多面的な魅力を語りあう時間を
ご一緒させていただいた皆さんに感謝。
そして、作者の吉澤ゆう子さんにも
すばらしい歌との出会いを与えてくださり、
深くお礼申し上げます。

批評会のなかで何度かひかれていた歌で、私も好きな歌ですが

  チェロとなり木は樹でありし頃のこゑ聴かせてくれる吾と共にゐて

という作品があります。

かつて樹林のなかの一本であった木が切り出され、
その木が職人の手でチェロとなって、
いま声を聞かせてくれている。
そしてチェロを弾く私も、その木が樹であった時点からの
時間のふくらみを共有しているような、
そういうあたたかみのある歌だと思います。

余談ですが、この歌に出会ったときに思いだしたのが
いせひでこさんの絵本『チェロの木』。
主人公の少年のおじいさんが育てた森の木が、
チェロ職人の父親の手でチェロが作られる。
大きな森や木のあたたかさ、チェロの音色のあたたかさが、
主人公を含めてさまざま人の手を経て
過去から今へ、現在から未来へと伝えられていくような世界観があって、
これも大好きな絵本です。

(※ 吉澤さんの「吉」の表記は、正しくは下棒の長い字形です。)

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