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このごろ、幼いころ・若いころに親しんだ著名人の訃報に接することが多くなり、その度に「ああ、あの方が…」とショックを受けています。

作家の永井路子さんもそんなお一人。
先日、97歳でお亡くなりになったとニュースで流れてきたときには「ついに永井さんも…」と思い、大きな穴が空いたような気持になりました。
永井さんの小説やエッセイ集は大好きで、今でも20冊以上は書棚に並んでいると思います。

永井さんのファンになるきっかけは高校3年生の時。
大学受験を間近に控えた学年となり、クラスの友人との会話も勉強や受験に関する話題が増えてきていました。
私は社会科は世界史を選択することにしていたのですが、覚えないといけないことが山のようにあって、でもなかなか覚えられないのですよね…
そんなとき、同じ世界史選択の友人が「これを読んだら、すごく世界史の出来事が頭に入ってくるよ」と薦めてくれたのが、この本でした。

(これ、高3の時に買った実物です。未だに我が家にあります。)

文庫本で手に入れやすかったこともあり、すぐに入手して読んだら、
何これ! 面白い!
世界史にも登場するような女性たち(それも、いろいろな時代の)の生涯について、時代背景や彼女を取り巻く人々の描写も交えながら、分かりやすい文章で紹介した文章の数々。
例えば、アグリッピナ(暴君ネロの母)、エリザベス女王やメアリ・スチュアート、マリア・テレジアにマリー・アントワネット、エカテリーナⅡ世、則天武后、それから神話の世界とも言えるトロイのヘレンやサロメ、またサッフォー、エロイーズ、ローザ・ルクセンブルク、などなど。
あっという間に夢中になりました。
そして、確かに世界史のあれやこれやが頭にすっと入ってくるような気がしました。
(だからといって、世界史の成績が急上昇したわけではないのが悲しいところですが。)

これをきっかけに、永井さんの文章がすっかり好きになり、まずは同じ「歴史をさわがせた女たち」シリーズを集め、それから他のエッセイ集、そして小説も何冊も買い集めました。
特に好きなのは『美貌の女帝』(元正天皇)、『朱なる十字架』(細川ガラシャ夫人)、『流星 お市の方』など。
また、『今日に生きる万葉』などは、万葉集をとても親しみやすいものに感じさせてくれました。

永井さんの文章は、その文体そのものも好きですが、歴史上の事象について、とことん調査し、とことん原資料にあたって確認し、そういった膨大な作業の上に得られた情報を合理的に解釈しながら書いている、そういった説得力のある文章であるという点に非常に魅力を感じてきました。
また、それまでの通説的なものや、それまでご自身も信じていた俗説的なものについても、きちんとした裏付けがあればそれを覆すことも厭わない、そういった潔さにも惹かれていたような気がします。

永井さんは亡くなってしまいましたが、文章を読むと、永井さんに語り掛けられているような気分になります。
実際に永井さんの声を聞いたことがあるわけではないのですが、そういう気持になるのです。
そういうものを遺せたということは、ものを書いてきた人間にとって、とても幸せなことだったのではないかと思います。

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