源氏物語占い / 梶原さい子
2024年12月号
大河ドラマで紫式部が取り上げられていることもあり、世は何度目かの源氏ブーム。「塔」でも八月号に「源氏物語の歌枕」という特集があって、わくわくして読ませていただいたところだ。
『源氏物語』と言えば、高校生と授業で本文を読み解いた後に、お遊びで、源氏物語占いをすることがある。質問にイエスかノーで答えていくと、「あなたは誰々タイプです」というふうに、源氏を取り巻く女君の一人に行き着くものだ。確かに、女君たちは良く書き分けられ、キャラ立ちしている。紫式部はすごい。選択式の占いにも、もってこいの素材となっている。
質問には例えば「年上が好き」や「嫉妬深いほうだ」というものもあって、すると予想通り、前者は紫の上、後者は六条御息所にたどり着く。それはあまりに短絡的だとしても、中には意外に考えさせる質問もあるから、一問ずつ答えていくうちに自分の心が映し出されるようにも思うのだろう、結果が出ると高校生たち、当たってる当たってないときゃーきゃー言っている。面白いのは、夕顔が人気なところ。葵の上、紫の上はまあまあ。六条御息所になると大概がっかりしている。そうして、やはり、自分が行き着いた人物には興味を持つようだ。大和和紀の漫画『あさきゆめみし』や、天海祐希、生田斗真の映画の画像などを開き、「これが私か」と見入っている。
今はネットで検索するだけでもたくさんの種類の源氏物語占いがあるけれど、一番始めに自分自身が占ったとき、私は「空蟬」だった。それこそまだ十代の頃。だから、空蟬は特別な一人になった。
空蟬はまだ源氏が十七歳の時に出会った中流階級の「女」で、強引に一夜を共にさせられた後、源氏を拒否し続けた。それでも源氏は諦めずに寝所に忍び込むのだが、女はすんでのところで、察知して逃れた。その時、一枚残した薄衣が蟬の抜け殻のようで、「空蟬」という呼び名になったのである。
さっと逃げた、その透明な翅のイメージが今も心にある。
「空蟬」の入った歌を二首。
空蟬の身をかへてける木の下になほ人がらのなつかしきかな
源氏の歌。木の下で蟬の抜け殻を見ながら、女を思っている。
空蟬の羽
こちらは女の歌。拒みながらも、密かに涙を流してしまうのだ。
さて、先日改めて占ったら「葵の上」だと。お、今の自分、少し気難しい? アドバイスとして、「気取りを捨て、漬け物やおまんじゅうをこしらえましょう。そして勇気を出して近所に配るのです」とあったので、ん?と思いつつ、早速やってみたことだった。