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カテゴリー "真中朋久"

少し前に「不穏な惑星」と題して、スズメバチの巣のことを書いたが
ようやく冬になって、ハチの活動も休眠期に入ったので撤去することができた。
ラグビーボールより少し小さいサイズ。

このまま飾るか……と思ったが、そういう場所は無い。
家人にも拒絶されたので捨てるほかはないのだが、ただ潰して捨てるのももったいないので
断面を見てみることにした。

三階建て。
面白いのは外殻のが一枚の厚板ではなく、薄い板が空洞をはさんで重ねられていること。
「保温」の効果について言及している記述はいくつか見つけたが、この構造はおそらく強度にも関係するだろう。
軽くて強い構造をつくろうと思ったら、段ボール箱のような構造になるわけだ。
 

蜂の巣といえば、いわゆる蜂の巣構造。六角形の構造そのものが軽さと強度を備えた構造だった。

ふと見ると、軒下にもうひとつある。ひとまわり小さい。

こちらはきれいに取り外す事ができなかった。
外殻を引きはがしたところが、内部はやはり三階建て。


 

窓の上に巣くいし蜂のひそひそとこもりて音す曇り月夜を/高安国世『砂の上の卓』

 
この家に住む人は、ぜんぜん気づかなかったそうだ。
 

実家の庭先。

籠の中に餌があるかどうか見に来た。
シジュウカラと、それからヤマガラも来る。
ヤマガラのほうがあつかましく、残り少なくなってくると「ぢいぢい ぢいぢい」と啼いて要求する。

鳥の専門家に言わせると、あまりたくさん与えてはいけないらしい。
やはり、自分で餌を見つける力をつけなければ。
 
(歌の題材も自分で見つけなければ)


 
餌はヒマワリの種。
くちばしでつまんで、近くの木の枝の上で殻を割って食べる。
 
枝にとまる足で固定して、くちばしで高速打撃を加え、じょうずに殻を割る。

食べ終わると、また、元気な声を上げる。

みちのくのごとく空澄み四十雀の元気のこゑは北の窓より/花山多佳子『三本のやまぼふし』

関西に戻ってくると、やはり青空が靄っぽい。
晩秋から冬にかけての関東の青空は青いが、北のほうに行けば、さらに青い。

理屈を言えば水蒸気量とか、大気層の厚さとか。

夜のふけをたたみの上の蟻ひとつ黒く小さく迷ひつつゐて/齋藤史『ひたくれなゐ』

古い家なので、蟻ぐらい、普通に出入りする。

ところが、入ったはいいものの、どこに帰るのかわからなくなってしまうのがいる。
どこの世界にも、そういう粗忽な者はいるもので、と言いながらだんだ身につまされてくるのだが。

アリやハチの類のよくやるしぐさ。
自信がなくなると、触角のメンテナンスをする。

湿度の高いときに、蜂などもよくやっている。

パソコンの中には入らんといてね。

バグ(虫)は困るよ。

川のなかに大岩ありてスズメバチは木星のごとき巣を作りおり/吉川宏志『石蓮花』

半年ぶりに、実家の庭のあれこれ。草刈りと樹木剪定。
電動の剪定機(トリマー、バリカン)で調子よくツツジの剪定をしていたところが、大きなスズメバチが飛んでいることに気づく。
何をするのか、どこへゆくのかを追跡してゆくと、ありました。不穏な惑星が。ツツジの根元近く。
 
もうすこしでそこにさしかかるところだった。
スズメバチのほうも電動機の振動を感じて、警戒態勢に入っている模様。

幸い、当方には気づいていないようで、巣のまわりをしきりに点検している。

というわけでツツジのそのあたりはあとまわし。冬になったら巣は放棄されるはずなので、そのころに対処することにする。
 

あざみ咲き烏瓜(からすうり)の葉しげみたり秋暑き日の崖下のみち/川田順『技藝天』

しばらく前までは、また「秋暑き日」などと言っていたのだが、ここ数日ぐっと季節が進んだ。
昨日が立冬。

烏瓜の話をしているんだよ。おまえさんを呼んだわけではないよ。

ヤマモモの実が熟してきた。

どうせ落ちるのだからひとつふたつ摘まんで食べても誰も文句は言わないだろう。
よその家の垣根から外に出ている枝はちょっと問題だが、公園に植栽されているようなものならば。

だいたい見た目どおりの甘酸っぱい味だが、種は大きいので期待したほど味わえるわけではない。

山桃をジャムにせむとて始めたる種取りなれど倦みぬたちまち/なみの亜子『バード・バード』

たくさん収穫できても、種取りはたいへんだ。

ザクロの花が咲いている。


 

タコさんウインナー、タコさんウインナー。これは石榴の萼でありたり/小田桐夕『ドッグイヤー』

まことに、そんな印象でもある。花びらも、ちゃんと薄い朱色のひらひらがあるが、それが萎んだあとにのこっている萼の、基部が果実として太るまでの間は、もう「タコさんウインナー」にしか見えない。

こちらはハナザクロ。八重咲き。

風あらぶ六月の庭いつ逢へる君とも知らず咲く花柘榴/苅谷君代『初めての〈青〉』

 
ひとつひとつの花はあざやかだが、濃い緑のなかに咲いているのは、いくらか寂しげな感じもする。
ハナザクロが結実することは少ないらしいが、ザクロにしてもハナザクロにしても、果実がそこにあるのと花が咲いているのと、遠目にはそれほど違わない印象になるあたりも、花の寂しさにつながるかもしれない。
 
ちなみに、木扁をつけて「柘榴」で通用しているが、もともとの漢名は「石榴」。簡単なほうへ流れるというわけでもないのが面白い。

速度から解放されて休みゐる貨物列車のコンテナの群れ/金田光世『遠浅の空』

列車の到着地だけでなく、途中駅でもコンテナの積み下ろしはある。
この駅は、北に向かう列車が、午前中の停車で一部を切り離し、午後に戻るときにまた増結して南へゆく。
それほど扱いの量が多いわけではないが、トラックやトレーラーがコンテナを運びこみ、フォークリフトがそれをコンテナ台車に積みこんだりしている。トラックがいつでも待っているわけではないから、到着した列車からおろしたコンテナはいったんコンテナ置き場に置く。二段までは積み上げる。

「速度から解放されて休みゐる」は、長旅の電車から降りた人間の実感でもあるだろう。

これは山手線を通過する貨物列車。北海道から東北本線を南下して名古屋までゆく列車。昼前の池袋を通過する。私有コンテナ(JR貨物所有でない)は、会社の名前を大きく書いて、それ自体が宣伝のようにもなる。

上空に寒気が入っていて、大気の状態が不安定。
このへんでも2度ほど雷雨になった。
 
いったん雨が上がったので食料の買い出しに近所まで。

サンゴジュの花が咲いている。
だいたい、赤い実のほうの印象が強いが、当然ながら花も咲く。

歩み入るこころはやさし杜なかに珊瑚樹はなべて白き花つく/上田三四二『黙契』

蝶が来ていた。
どこで雨宿りをしていたのだろう。
 
ようやく食事にありついたという感じで、花にとりついている。
 
ツマグロヒョウモン♀か? と思ったが、ちょっと違う。
これはたぶんアカタテハだ。

いつとなきふるき落葉を掻きにつつわれが見るアカタテハ蝶の賑はひ/森岡貞香『黛樹』

そうやって道草をくっていたら、次の雨雲がやってきた。
買い物をしてスーパーを出るころには、ふたたび土砂降り。

クロガネモチはモチノキ科モチノキ属。
カナメモチ(レッドロビンなど)はバラ科カナメモチ属。
ネズミモチについては、昨年(2023.06.22)ここに書いた。

モチ(黐)はモチでもややこしい。


これはクロガネモチの花。いまちょうど咲いている。

黐といひ山茶花といひわが植うる庭木は蠅が好みてたかる/菊池庫郎『二歌集の続き』

「黐」としか言っていないが、蜜でつやつやしているあたり、蠅が好むものかもしれない。


こちらはカナメモチの類。4月の中旬ごろ。

真四角にレッドロビンは刈られおり耐える力はどこに生まれる/富田睦子『風と雲雀』

カナメモチやアカカナメモチ、レッドロビンの花が咲いているという歌はみつけられなかった。生垣に仕立てて強剪定してしまうと、なかなか花芽がつかない。生垣をめぐらした一か所か二か所にささやかに花をつけてるぐらいのことが多い。
写真のこれは新しく植えられた若木。せいいっぱい花をつけている。
バラ科なので五弁の花。

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