ブログ

アーカイブ "2026年08月"

相原かろです。

特集「助詞を考える」に関連して、助詞の話題をひとつ。

読んだ当時(13年くらい前)、とても感銘を受けて今でも忘れられないのが、
ある座談会記事での澤村斉美さんと吉田恭大さんとのやり取りです。

その座談会は「結社にふたたび出会う」(「塔」2013年10月号掲載)。
参加者は、澤村斉美・吉田恭大・安達洸介・大森静佳・藪内亮輔(司会)の各氏、
塔ホームページのアーカイブでも公開されています。
https://toutankakai.com/magazine/post/308/

この中で、塔の先輩歌人でもある田中栄さんの歌に言及した箇所があります。

指導工に辨当かくされて職習いし頃の物怖じが今に支配す
                 田中 栄『岬』(1973年、構造社)

この歌についての澤村さんと吉田さんのやり取りが面白い。
小見出し「田中栄と結社的〈読み〉」から部分引用します。

澤村 私のおすすめは田中栄さんです。二〇〇三年八月の東京の全国大会で名誉会員に推挙されるということで田中さんが登壇されたんです。挨拶で、私はアララギでやって来て……という話をされるわけです、結構体が大きくて。土屋文明の歌会がすごく厳しかったこととかを楽しそうに語られて、私は結社に入って初めてそのとき生で短歌史に触れた気がした。結社に入ることの一つの驚きというか未知との遭遇というか、全然自分が知らない短歌史を生きてきた人がいるっていう、その出会いが大きいですよね。『岬』っていう第一歌集の一首目の「冬田の上に落穂をひろう鶏(とり)の群日のある方へ移りつつあり」のように絵がぱっと浮かぶような写生の歌とか、職場詠も良くて、これは若いときの歌だと思いますが「指導工に辨当かくされて職習いし頃の物怖じが今に支配す」。ちょっとずつ引っかかる韻律ですよね。若い頃に自分の中に植え付けられたコンプレックスや暗い思いが今の自分の人格をも支配しているっていうことだと思うんですけど、説明的にずっと詠ってきて最後の「今に支配す」に重みがある。心情を韻律に託しながら克明に描写する、こういうのができるのがアララギなんだと学ばせてもらった気がします。本人とお話ししたことはないけど。

吉田 この「に」ってすごいですね。「今を支配す」じゃなくて「今に支配す」。

澤村 今になってとか今になってもなおっていう意味が含まれていると思う。(後略)

韻律や結句の重みを読んでいる澤村さん、
〈「に」ってすごいですね〉と応答している吉田さん、
ともに「すごいなあ」と、当時私は思いました。
自分なら「指導工に弁当を隠された」という事柄だけに注目してしまいそうです。
(事柄も大事だとは思いますが)

助詞を読むってこんなに面白いのか、読み方によってこんなに歌は豊かになるのか、と感じたやり取りでした。

(※ブログ筆者註:吉田恭大さんの「吉」の字は、下棒が長い「土」に「口」です。)

「塔」2026年8月号 p207に一首評募集広告が載っています。
引き続きよろしくお願いいたします。

岡部史です、こんにちは。

過日の当ブログで、高校時代の仲間が主宰している、東京都内の散歩会に
参加したことについて書きましたが、その折有栖川宮記念公園に立ち寄ったことにも
触れました。その園内を仲間たちと歩いていた時、何人かが、立ち止まって
何か見ているのに気が付きました。その中の一人が、「これ、な~んだ?」と
話しかけてきたので、「え、木の実? あれれ?」

そう、木の実というには、不思議な場所に生っていたのです。葉の上に・・。
これが、話に聞く、虫こぶ、だったのでした! 私は身近に見るのは初めて。
気持ち悪いかも、と思いながらも、つい見入ってしまいました。

虫こぶとは、昆虫とかダニとかが、植物の遺伝子に作用して、組織を異常に
発達させ、ここに卵を産み付けて、食糧供給地、兼シェルターとして利用する、
といったものらしい。この中には多分、アブラムシの子とかがいるのかも。

この虫こぶ、人間にも利用される例があるのだとか。たとえば、マタタビ酒に
利用されるのは、マタタビの生果ではなく、虫こぶの方らしい、というから、
なんとも・・・・。

この有栖川公園、東京のど真ん中の、麻布にあります。かつては、麻の産地だった、
というところからの地名ともいわれていて。のどかな田園地帯だった時期があったのでしょう。

 麻布台とほき木立のあたりにはつばさ光りて鳶の翔(かけ)れる
                   古泉千樫『青牛集』

二度ありし大地震ののち四月分の十首を揃う意地にて揃う/垣野俊一郎『くらやみにひらく』

垣野さんの歌集の冒頭は10年前の熊本地震。一連のタイトルは「前震と本震のあとで」であり「二度ありし」はそのこと。
 
10年と言う短い期間で、ふたたび、さらに大きい?地震に見舞われるというのはたいへんなことです。

熊本周辺のみなさんご無事でしょうか。
大きな被害がなくても、生活にご不便を感じていらっしゃるでしょうし、責任のある立場の方は多忙をきわめているのではないかと思います。

元気を出すためにも詠草を「意地にて」揃えるのもよいと思いますが、まずは安全確保でしょうか。

暑さもきびしいなか、お気をつけてお過ごしください。

ページトップへ