続・茱萸叢書(松村)
茱萸叢書(ぐみそうしょ)について、永田さんが書いた文章が見つかりました。
三枝昂之・田島邦彦編『処女歌集の風景』(1987)の中で、『メビウスの地平』刊行の頃のことを次のように書いてます。
ある日、全く見も知らない男から手紙が舞い込んだ。青山敏夫といった。私の歌集を出したいということであった。
初めて会ったのは、新宿だっただろうか。彼は大手の出版社に勤務しており、歌は作らないが、読むのは大好きだという。何と奇特な人もいるものだと新鮮に驚いたのだが、事実、私などよりよくいろんな歌を知っているように思えた。生半可なディレッタントに顔つき合わすような気恥しさは、少しも感じられなかった。
読んでいるだけでは飽き足らなくなり、本業とは別にアングラ出版をしたくなったのだという。同年代だということも加わり、大いに意気投合したのだった。同じ頃、角川の『新鋭歌人叢書』に加わるよう誘いを受けたのだったが、初めての本くらいは、小さなところから手作りでという気持ちが強く、彼にまかせることにした。
『天唇』(村木道彦)が出、私のが出、『晩秋挽歌』(福島泰樹)が出て、ほどなくつぶれてしまった。あちこちに迷惑をかけたまま消えてしまった、不思議な男であった。
この文章が書かれてから既に四半世紀。
今頃、どうされているのでしょうね。
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