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もう春だとおもっていましたら、一転して寒くなってきました。

もうすぐ春といえば、キャンディーズ。
もうすぐ春といえば、恋をしてみませんか♪
・・・
もうすぐ春といえば、お別れの季節。

先日、ちいさなお別れの宴があって、件の日本料理店にいきました。
お店に入ると写真のとおりすこしこぶりの白磁のすてきな花瓶が飾ってありました。

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鳥取には、白磁をきわめて人間国宝になった前田昭博さんという陶芸家がいらっしゃいます。
もしや、と思って店主にたずねると、そうですよということでした。

ぼくは片田舎の小さな公立の小学校に通っていました。田舎の小学校なのに、というとよくないですが、音楽や図工にとても熱心でした。小学校なので教科担当制ではなく、担任の先生がほとんどの教科科目を教えてくださっていたのですが、図工の時間だけは図工の先生に習っていました。そしてその図工の先生こそ、人間国宝の前田昭博さんのお父さんでした(前田先生)。

当時、前田先生は子どもさんが白い焼き物を作っているからといって全クラス(1学年2クラスずつ)に白い花瓶を持ってきてくださいました。いまならば白磁の壺とか白磁の花瓶とかいうのですが、当時は「白い花瓶」といっていました。週に何度かは、花の水かえをするために、その大きくて白くて美しくてつるんとした花瓶を両手に抱えてもって手洗い場にいきます。しばらくして、隣のクラスの白い花瓶が水かえをしているときに割れてしまいました。つぎには、ぼくたちのクラスの白い花瓶も割れてしまいました。さらに時間がたつと、あっちでもこっちでも白い花瓶は割れていきました。前田先生のお子さんが一生懸命お作りになった花瓶だということで(もちろん当時は無名だったと思いますが)みんなで大切にしようと言っていたのですが、水の入った白い花瓶の一つ一つは小学生にとっては大きくて重い花瓶だったので、手をすべらせて割ってしまっていたのでした。

2年ほど前に、ある宴で前田昭博さんとすこしだけお話する機会がありました。ぼくは小学校のときの前田先生の思い出と白い花瓶の話をしました。昭博さんは、そうでしたか、となんだか少し恥ずかしそうにでもうれしそうに笑顔で言葉を交わしてくださいました。

人間国宝の手による白磁の花瓶は、購入することはできないほど遠くにいってしまったのですが、ぼくにとってはあの白い花瓶は前田先生の熱心な図工の授業とともにときどき思い出されるのです。

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