埋め草その2(松村)
同じく1990年5月号から、吉川宏志「花水木」。
短歌を始めてから、だいぶ花の名を憶えたと思う。始める前は、木蓮というのがどの花かも知らなかった。木蓮はたくさん家の回りに咲いていたのだが、不思議なもので、名前を知らないうちは咲いていても気付かないのである。
そんな僕でも、歌を作る前から知っていた花に花水木がある。小椋桂という歌手に「くぐりぬけた花水木」なる曲があって、それで知ったのである。まだ中学生だった頃のことだ。
「その花の道を来る人の
明るい顔の不思議さに
くぐり抜けてみた花水木」
というような歌詞でいい曲だった。
まだくぐり抜けるほど見事な花水木の並木は見たことがない。
(以下略)
当時、吉川さんは21歳の大学生。
花水木と言えば、吉川さんの「花水木の道があれより長くても短くても愛を告げられなかった」という歌を思い出す。この歌は『青蝉』の第二章(1991年冬から94年秋までの作品)に入っているので、このエッセイの後に作られた歌ということになる。
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