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中学校では吹奏楽部、高校・大学ではオーケストラと、学生時代はずっと音楽系の部活に入っていました。
それで好きになったのが写譜です。

元々、中学校のときの顧問の先生の方針で、常に写譜をさせられていました。
なかなか時間がかかって面倒くさい作業ですが、そのうち、「いかにきれいに読みやすく書くか」に凝りだして、いつの間にか工夫して写譜をするのが好きになっていました。

その経験が役に立ったのが、大学オケ時代の演奏旅行です。
演奏旅行の話は、3年前の「夏と言えば演奏旅行!」という記事に書いています。
その時に、

 それと、ご当地の民謡や市町村歌などを演奏することもありました。
 これらは団員の編曲担当者が必死に、ほぼ一晩でオーケストラ用に編曲して、
 それをまた団員も、ほぼ初見で演奏していました。

と書いていますが、この編曲担当者が書くのはフルスコア形式、つまり全ての楽器(パート)が含まれている形式なので、実際に演奏するには、各パート譜を作らなくてはなりません。
そのため、担当者が書いたスコア譜をコピーして、そこから自分たちのパートの箇所だけを五線譜に写し取っていくのです。
スコア譜が出来上がってくるのは、大抵当日の朝(早くても前日の夜)なので、大急ぎで写譜を行ってパート譜を作らなくてはならないのです。
でも、急いでいるからといって乱雑に書いてしまうと、演奏する人が一発で読み取れず(ときには間違った音に読み取っていまい)、演奏に支障を来してしまいます。
なので、急いで、かつ非常に神経を使う作業ではあるのですが、ここは中学生のころからの「写譜好き」が功を奏して、私は比較的楽しんでこの作業を行っていました。
少しでも役に立てると思うと、うれしかったです。

私の好きな本の一つに、亡くなった指揮者の岩城宏之さんが書いた『楽譜の風景』(岩波新書)という本があるのですが、この最初の章はほぼ全部写譜の話で、とても面白いです。
その中に、浄書業(写譜業)の賀川純基さんの話があります。

 写譜がきれいで正確だと、非常に読みやすい。
 オーケストラのメンバーが余計なことに神経を使うことがなく、音を出すことに専念できるので、
 賀川さんの写譜だと、賀川さんの美しい音がした。

この文章に出会ったのは、おそらく大学に入ってからですが、だいぶ影響されたような気がします。
ちなみに、「社会契約論」で有名なJ.J.ルソーが写譜屋をしていたことも、この本で初めて知りました。
(あの「むすんでひらいて」を作曲したのもルソーです。)

写真は、我が家に残っていた、大学時代に写譜をした譜面です。
まあまあきれい、かな?
今では写譜をすることは全くなくなってしまいましたが、演奏旅行をしていた夏が来ると、ときどき懐かしく思い出します。

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