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グラジオラス

短歌で下から上へ咲くといえばジギタリスですが、この時期は下から順番に咲く花が多いですね。写真は家のお隣さん丹精のグラジオラス。他にタチアオイやネジバナなんかも下から順に咲きますね。こんな花の咲き方は無限花序ともいいます。(今度の歌集名、これにしようかな、格好いいな。と思ったら、そういや馬場さんにあったな。)

で、もちろん短歌のジギタリスといえば

赤い旗のひるがへる野に根をおろし下から上へ咲くジギタリス  『水葬物語』塚本邦雄

です。赤い旗が革命の旗の象徴であることは、まず間違いありません。菱川善夫さんはジギタリスが下から上に向かって咲く、というのを民衆からのボトムアップだ、という解釈をされています。

僕も単純にそんな風に捉えていたのですが、先日、鳥取で行われた現代歌人集会の大会で講演された三枝昂之さんは違った解釈をしておられました。「メトード」初出時にこの歌に続いて

贋札の類かろらかに街を流れ野をながれ暗い夕日にひびき 「メトード」創刊号 塚本邦雄

の一首があることに着目。贋札の歌は社会の浮薄さへの嫌悪ではないか。そうすると、ジギタリスの歌も革命という嘘くさい幻想への侮蔑なのではないか、ジギタリスが持つ毒が社会に蔓延しているのではないか、という解釈です。「おお、なるほど、そういう解釈も成り立つのか!」と、様々に読める愉しさを再発見した次第。
しかし、この贋札の歌は『水葬物語』には収められていません。ジギタリスの歌の少しあとに「贋札(にせさつ)であがなひし絵の遠景の野をゆける盲目の縞馬」というのがあります。メトードの歌を改作したのかどうか、定かではありませんが、この絵の遠景の野は赤い旗が翻る野でまず間違いないでしょう。そうすると、盲目の縞馬は革命幻想に取り憑かれている者たち、とも読めるのかもしれません。

ああ、なんだか難しい話になってしまった。

革命や毒、といえば最近読んでいる句集に

黒椿革命前夜のように墜つ  『藤原月彦全句集』

回帰熱病む弟に鳥兜  同

こんな句がいっぱい出てきて、クラクラしながら読み進めています。藤原月彦さんはご存知、歌人の藤原龍一郎さんの俳号です。出発は俳句だったみたいですね。

最後になりましたが、九州南部地方のみなさま、被害などありませんでしたでしょうか。

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