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これは何でしょう?

答え、タイトルに出てしまっていますね。
はい、ヤドリギ(宿り木、寄生木)です。
他の樹木の枝や幹にくっついて育つ、半寄生性の常緑樹です。
鳥がヤドリギの実を食べ、粘着質な物質に包まれたヤドリギの種が鳥の糞とともに樹皮の上に落ちると、発芽し、木の中へ根を伸ばして寄生を始めます。
全体像はこんな感じ。

大学の農学部のケヤキの木にくっついているヤドリギです。
研究室から生協食堂へ行くのに、ほぼ毎日見ます。ヤドリギは木の高いところに見つけることが多いですが、これは手の届く高さ。でも、ほとんど誰も気に留めません。

キャンパスのこんなところにヤドリギがまるく巣ごもり誰も知らない
           永田 紅 2000年3月13日『北部キャンパスの日々』
キャンパスのこんなところのヤドリギがずいぶん大きくなりしを目守(まも)る
                    「現代短歌」2018年11月号

私が学生のころはもっと小さかったのですが、20年ほど見ているうちにずいぶん立派になりました。木のうしろから見たら、はみ出るくらい、まるまるに。

時間の流れを感じるのは、ふつう樹高や幹の太さの変化によってですが、ヤドリギは球体の大きさによってなのが、なんだかかわいいです。

古典にも、ヤドリギは詠まれています。

あしひきの山の木末の寄生とりて挿頭しつらくは千年寿くとそ
(あしひきの やまの こぬれの ほよ とりて かざしつらくは ちとせ ほぐとぞ)
              大伴家持 『万葉集』 巻18-4136(750年)

「寄生」(ほよ・ほや)はヤドリギの古名。
「山の木の梢のヤドリギを取って、髪に挿して飾るのは、千年の長寿を祈ってのことだよ。」
ヤドリギは生命力の象徴ととらえられていたようです。

『源氏物語』にも、ヤドリギ登場。でも、このヤドリギはツタのことだそうです。

やどり木と思ひ出でずば木のもとの旅寝もいかに寂しからまし  
荒れはつる朽ち木のもとを宿り木と思ひおきけるほどの悲しさ  
                 『源氏物語/宿木』

はじめてヤドリギを見たのは、1994年3月にヨーロッパ旅行をしたときでした。
パリから、画家ミレーが愛したバルビゾン村へ行くために電車に乗ったのですが、車窓から、川沿いの冬枯れの木々に、たくさんのヤドリギがまるまるとくっついているのを見て驚きました。

鈴なりのヤドリギで印象的なのは、松山城のお堀の周り。
年に二度、子規記念博物館へゆくために松山を訪れるのですが、このヤドリギを見るのも楽しみのひとつです。

私は、ヤドリギの丸さや、鳥の巣みたいな不思議な浮遊感が好きですが、あまりたくさんくっついていると、肩が凝りそう…

西洋では、クリスマスの時期にヤドリギを飾りますが、「ヤドリギの下では女の子にキスをしてもよい」(”Kissing under the mistletoe”)という風習もあるそうですね。
ハリーポッターの「不死鳥の騎士団」でも、ハリーとチョウがキスをするとき、頭上からヤドリギの木が現れました。

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