ビール瓶のある風景
わが家の食卓脇にかけている
現代短歌カレンダーの8月に、こんな歌がある。
旧友の一人のやうにビール瓶かたはらにあり汗をかきつつ 田村 元
そういえば、しばらく瓶のビールを飲んでいないなあ・・・
そんな感想とともに何度かこの歌を読み直してみると、
とても味のある歌のように思えてきた。
作者は、いま現在(歌の詠まれた時点)では
おそらくひとりでビール瓶をグラスにかたむけているのだろう。
ビール瓶に語りかけるように。
それにしても、結句の「汗をかきつつ」がとてもリアルだ。
表向きは、瓶の結露の比喩だけれども、
かつて汗をかきかき瓶ビールを酌み交わした友人との時間の記憶も
重ねあわされているのかもしれない。
いまは、連れ立って店で飲むこともはばかられるが、
その季節季節を愛で、それぞれの境遇に共感しながら
ゆっくりと酒を飲みかわせるような
そんな世界が戻ってきてほしい。
でも、どちらにしても
そういう余裕をもてることは
もうしばらく自分にはないだろうな・・・
いろいろな思いとともに、長期休暇前の最後の晩、
誰もいなくなった食卓にひとり、
ひさびさの缶ビールを味わう。
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