ヌートリア
ランニングのコースの一つにしている近所の川の河川敷。この日は走るのではなく歩き。まだ明るさの残る夕暮れの草地に、ふと見ると何かがごそごそやっている。
猫ほどの大きさだが、どうも猫とはちょっと違うような感じ。
こちらをちらりと見て、しかし、驚いたふうでもなく、のそのそと迷惑そうに水に入って泳いでいった。
しまったという顔でないヌートリア岸に上がって我に出あって/池本一郎『萱鳴り』
まことに、そんな感じ。
「ビーバー!」と言うひとがいるが、ビーバーはもっと尾が幅広い。「カピバラ!」と言うひとがいるが、カピバラは顔がでかい。
動画からクリップしたので画像は粗いが3枚ほど。
大島史洋さんの『四隣』の「ヌートリア」5首は、これはなかなか大袈裟で面白く、しかも切ない。
木曽川の河川工事に追われつつヌートリアは北上すわが故郷へ
ヌートリアの興国の祖は五十年前毛皮となるため拉致されて来し
帝国の裔に生きつぐヌートリアその面立ちは種を守りたる
ヌートリアわれらと戦後を共にしていま木曾川をさかのぼるとぞ
五十年ひそみつづけてたくわえし力はふたたび弾圧されむ
日本に連れてこられ、野性化して、それが話題になるほどに増えるのに、そのくらいの時間がかかったのか。それはまさしく戦後という時間であったのだ。
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