ブログ


岡部史です、こんにちは。
香月泰男はずっと気になっている画家の一人でしたが。
今年亡くなった立花隆著『シベリア鎮魂歌 香月泰男の世界』を
読んでから、作品をじかに見たい、という思いが高まっていました。
神奈川県立美術館葉山で、生誕110年記念展が開かれると知り、
ちょうど緊急事態宣言も解除された一カ月半前、出かけることに。
多摩の奥地の我が家から、葉山の海岸沿いにある美術館まで
電車とバスを乗り継ぎ、二時間あまりかかるのですが。

覚悟はしていたのですが、やはり、重苦しく、暗い絵。
どの絵も思い描いていたよりもはるかに大きく、見ていると、
絵の暗鬱な空気が覆いかぶさってくるような気持ちにさえなって。
息苦しいようでした。そして、やはり戦後、ラーゲリでの生活を
余儀なくされた、「塔」会員の塩谷いさむさんの作品を思い出しました。
九十歳過ぎて亡くなるまで、戦地での体験を詠み続けておられました。

  夜半すぎて月の雫に濡れながら戦友の墓標をめぐる動哨
  短夜の夜襲に遭ひしをののきがいくさの中の原点に在る
  トーチカの覗き窓より眺めたるアムール川をとほく思ひぬ
              塩谷いさむ『琅玕』

美術館を出ると、目の前に美しい海が広がり。
しばらく、平和の有難さをかみしめました。

コメントを残す

ページトップへ