ブログ

ときどきお世話になる病院。歩ける距離だが、送迎バスが近所までまわってくるので、それに乗ってゆく。
病院に着くころに救急車に追い抜かれ、救急車の後ろについて門を入ることになったりする。

いま「急患」と言えば、だいたい救急車を呼ぶような場面。
そうでなければ「休日夜間受付」を掲げる医療センターのようなところだろうか。

そういえば、昔は町中の開業医の看板に「急患随時」と書いてあるところは多かった。
今でも掲げているところはあるかもしれないが、だいたい自宅と診療場所は別だったりして、時間外に行っても誰もいないようなところが多くなった。

急患の深夜のベルに怯えつつ目覚むれば反射的に立ちあがりゆく/地崎登美子『きらめく海風』
急患の戸をたたきゐる音きこゆ今日日曜の夜をこもりゐて/小林克郎『どくだみの花』
ひとりだにおとづるる友の気配なく連休に数人の急患を診る/林宏匡『ニムオロのうた』

こんな歌を見ると たいへんだったのだなあ と思う。救急患者が運び込まれる大病院の当直医師もたいへんだと思うが、自宅で開業している医師は24時間365日、そこにいる限りは当直勤務をしているようなものだ。
地崎さんは御夫君が医師。出かける準備を手伝わなければならないという感じか。

殴りつけし妻の頬の腫れ診て呉れとがたがた顫へ真夜を男来つ/岡 和一郎『鬼面川』
診察をへてまかづる吾を見送るとはらから五人戸口に並ぶ/同『雪と雁』

岡和一郎は常磐炭礦の病院に勤務していた人。鉱山だから、みなさん荒っぽい。家庭内暴力といえばそういうことであるけれど、医者を頼って駆けこんできた男の表情も浮かぶようだ。二首目の患者は《くりからもんもん》の人。「はらから」は別の場所の抄出では「兄弟」だったので子どもたちかと思ったが、あらためて読めば血縁とはちがった紐帯をもつ人たちのようでもある。

コメントを残す

ページトップへ