南海多奈川線(松村)
田中栄さんの遺歌集『海峡の光』には、岬町の身近な風景を詠んだ歌が数多くある。田中さんのお宅を訪ねた後に読むと、一層心にしみる。
冬海の岸に溜まれる水澄みて今日も映せり妻との歩み
港のうち繋がれし漁船きしみつつ積まれし蛸壺に冬の日がさす
定期航路なくなりし港しずまりて水母漂う西日に透きて
わが歩行の町なかにある鉄工所いつか閉され赤銹流す
廃線になるかも知れずふるさとの鉄路のうえを歩く鶺鴒
南海多奈川線は、みさき公園駅〜多奈川駅の2.6キロの短い路線。2両編成のワンマン電車が往復運転をしている。途中に深日町駅、深日港駅の二駅があり、かつてはこの深日港(ふけこう)から淡路島や徳島へ向かう定期船が出ていたそうだ。
『海峡の光』(3500円)はまだ在庫があるので、お読みになりたい方はお知らせ下さい。
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