「歌壇」11月号(松村)
水沢遙子さんの「雨の時間」12首のなかに、こんな歌がある。
午後に話すことを車中にて反芻し同じところでみたびつまづく
高安国世と近藤芳美の出会ひしは一九四八年秋のオフィスに
夏のをはり常陸のくにに来しわれのつたなきさまも見守られをらむ
大いなる二人にまみえたることは我がさきはひと深く思ふも
今年の夏、土浦で行った「塔」の全国大会に、水沢さんを招いて「高安国世と近藤芳美」という講演をしていただいた。その時のことを詠んだ歌である。
また、同じ号の「歌人の横顔」というコーナーには、米田律子さんの「出合うという別れ」という文章が載っている。昭和59年7月1日に、京都で米田さんの歌集批評会が行われ、高安国世と近藤芳美が揃って出席した話である。高安の亡くなる約一か月前のことで、それが二人の最後の別れとなったのであった。
1948(昭和23)年の出会いを詠んだ歌と、昭和59年の別れを記した文章。この二つが、偶然に同じ号に載るというのもすごいことだと思う。
コメントを残す