嘉南大圳
桂花醤
鯉
もともとは京阪間の農村地帯。
かなり宅地化しているけれど、水田も残っていて用水路に水が流れている。
その水路の鯉。
用水路は、地元の農家が共同管理することが多いが、この水路はどうなっているのだろう。水路というか、鯉のことが気になるのだが。
市役所には少し前まで「水路課」というのがあったはずだが、今は「下水道課水路係」になっている。
まるまる太って美味しそうだ。
そういえば、最後に鯉を食ったのはいつだったか。
鯉の歌はたくさんあるが、佐藤佐太郎『形影』冒頭一連「鯉」の3首め。
・落葉朽ちしづめる水にをりふしに鯉をりて憂(うれひ)なき濁(にごり)をあぐる
まことに憂なき鯉だ。
岸に立つと寄ってくるのは、近所の人が餌をやっているのだろう。
ちいさいのは稚魚か。
銅吹所跡
大阪の仕事場の近くにある「住友銅吹所跡」。
今は、三井住友銀行の事務センターか何かになっている敷地の隅の公開緑地的なところ。
別子その他で採掘された銅鉱が、粗銅の状態でここまで運ばれて純度の高い銅に精錬されていたということらしい。その過程で、微量に含まれる銀も取り出して製品になる。
江戸時代とはいえ、大都市の市中であるから、排煙の害なども軽微ではなかっただろう……と、近代になってからの大阪の煙霧(高安国世もそれで苦しんだ)との関連も思う。
住友の基礎は銅。
そして歌の世界では、住友関係といえば川田順や鈴江幸太郎。
鈴江幸太郎の歌集『白夜』(1949年)から「轉務」4首中2首。
・わが工場にけふも働く女學生のならぶうしろを事務室に入る
・あかあかと熔けたる銅のながれ落つ見つつ居りけり晝餉終ふれば
鈴江は、銀行系だったはずだが、戦時下の昭和18年には軍需で繁忙をきわめる住友電氣工業に転籍する。ほかに各地の鉱山を訪れる歌なども何首かある。
これは『夜の岬』(1969年)から。
・業(げふ)の末につながれば今日は入坑(にふかう)す元禄三年このかたの礦山(やま)
「せし」問題
「塔」の割付・再校作業でした。二十数名でみっちりと…というより、おいしい差し入れをいただきながら、にぎやかに読みました。
今日話題になったのは、「せし」を直すかどうか。
例えば「愛せし」。これは正しいですね。サ変動詞「愛す」の未然形「愛せ」に、助動詞「き」の連体形「し」が付いています。これを「愛しし」とするのは誤りです。
でもサ変動詞は例外。通常は、助動詞「き」は連用形にくっつきます。
例1:「満たしし」=「満たす」(サ行四段活用)の連用形「満たし」+「き」の連体形「し」。これを「満たせし」とすると、文法的には誤りです。
例2:「乗せし」=「乗す」(サ行下二段活用)の連用形「乗せ」+「き」の連体形「し」。これは「乗せし」が正しいのでこのままでよいです。
サ変動詞とサ行四段活用の動詞を使う時に注意が必要なのです。が、誤用が広まって「愛しし」「満たせし」のような使い方も多く見られます。校正としては、直しているときりがありません。今日のところは作者の原稿の表記に従い、特には直さないことになりました。
ということで、誌面には間違った文法のまま載っているものもありますが、文語の「せし」を使う場合には、ちょっと立ち止まって、辞書を参照してみてください。
①使う動詞の活用の種類を確認(サ変か、サ行四段活用か)。
②使う動詞の活用形を確認。サ変なら未然形「~せ」+「し」=「せし」、
サ行四段なら連用形「~し」+「し」=「しし」
辞書の巻末には文語の動詞・助動詞の活用表がついている場合がありますし、「広辞苑」第6版には、文法表の載った別冊がついています。上の2ステップを踏むだけで、恥ずかしい間違いはなくなるでしょう。
人それぞれ「せし」が好きだったり「しし」が好きだったりと音の響きに好みがあり、誤用を気にしない場合も多々あります。が、誤用がどんどん広がるのを黙って見ているのもよくないですね。
以上、校正現場の悩みでした。
写真は、永田家の庭の大きな柿の木。まだ渋柿ですが、皮をむいてつるしておくとおいしい干し柿になるそうです。帰り際に「うまそうだな」と見上げていた数人に、
永田淳さんが脚立に乗って、もいでくれました。