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 2月半ばのことになりますが、植田今日子さんがご病気で亡くなりました。ああ、いつの間にか2か月経ったと思っていたところです。今日子さんは、上智大学の社会学の教授で、12月号に、私の歌集『ナラティブ』の書評を書いていただいたばかりでした。

 知り合ったのは、東日本大震災後。今日子さんは仙台の大学にいて、津波に遭って、住民がばらばらになってしまったわがふるさと、気仙沼市唐桑町に、社会学・民俗学の調査でいらしてました。その時のことをまとめた本が『更地の向こう側 解散する集落「宿(しゅく)」の記憶地図』(かもがわ出版)なのですが、ほんとうにいい本で(どうでしょうか……今、手に入りますか……)、ひとの語りの豊かさというものを教えていただきました。

 

 その後、私は『リアス/椿』という、震災前・震災後を詠った歌集を出したのですが、その歌集を読む会に来ていただいて、第1部として、講演いただきました。懇親会では、皆さんと飲んで。たくさんしゃべって、たくさん笑って。面白かったし、ありがたかったと思います。

 今日子さんはまだ40代で、これから、もっともっといろんなことを話したかったし、教えていただきたかった……。でも、最後の日々も、本当に前向きでした。前向きな姿を見せてくださいました。

     夢よりもはかなき世の中を、歎きわびつつ明かし暮らすほどに、
    はかなくて四月十余日になりぬれば、木の下暗がりもてゆく。
                          『和泉式部日記』

 ああ、季節がめぐります。春から、夏に向っていきます。

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