工場萌え(藤田)
工場萌えというのがあることを数年前に知って、工場を見てわくわくどきどきする人が他にもたくさんいるとわかったとき、とても驚いた。
電車や車に乗っていて、工場の前で信号待ちや渋滞に巻き込まれると嬉しくてしようがない。自分が砂利やセメントになったような気がして流されたり捏ねられたりするのを想像してひとりにやにやしてしまう。
「sai」3号の特集が「工場 つくる」。封をあけると夕暮れのような夜明けのような空と海にクレーンが立っている表紙。紙の手触りもいい。目次の文字が大きくてウッとなったけれど、連作、評論、作品、合宿記録、エッセイなど盛りだくさん。工場が主役なのが嬉しい。
乗り馴れし暗色の軽(ケイ)、ささやかといへど火を生む臓器を持てり
高島裕
崩れつつ積み上げられし屑鉄の生き生きとして暮れ残りおり
奥田亡羊
ちょうど、今読んでいる岩野伸子さんの『鉄とゆふがほ』にも工場の歌がたくさんあった。
鉄削る音より鋭き声あげて昂ぶる者にわれ逆らはず 岩野伸子
工場の敷地に積まるる鉄管が一本一本夢に立ち上がる
谷口純子 にコメントする コメントをキャンセル