ブログ

歌人の岡部桂一郎さんが28日、亡くなりました。97歳でした。
「塔」には岡部さんのファンが多く、2002年4月号で「岡部桂一郎の歌を読む」という特集を組んでいます。
これは、永田さん・花山さんによるインタビューのほか、『緑の墓』『木星』について三井さんが、『戸塚閑吟集』について河野さんが書評を書き、さらに永田さんが岡部桂一郎論を書いているもの。
その後、第4歌集『一点鐘』(2002)、『岡部桂一郎全歌集』(2007)が、ともに青磁社から刊行されています。
以下、『一点鐘』から。 
目薬のつめたき雫したたれば心に開く菖蒲(あやめ)むらさき 
鉛筆が二本尖りて接近す小現実は冬の昼ごろ 
恐ろしき夢をみていたお駄賃に黒飴二つ母のくれたる 
短針を静かに追いて長針の重なる時に人の吐息す 
岡山の金光という町すぎて道辺の石に尻おろしけり
 
ご冥福をお祈りいたします。

松村正直 にコメントする コメントをキャンセル

  • aya より:

    ご高齢だったのですね。
    全歌集をいつか買おう買おうと思いつつ、よう買えずにいました。
    彼の歌の、そこはかと無いペーソスを愛する者より。
    岩国の一膳飯屋の扇風器まわりておるかわれは行かぬを
             『戸塚閑吟集』

  • 松村正直 より:

    「岩国の…」は僕も好きな歌です。2008年の東京の全国大会で、「読みをめぐって」というパネルディスカッションをやりましたが、そこで議論された5首のうちの1首がこの歌でした。

ページトップへ