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貨物列車とか貨車の名歌といえば、まず思い出すのがこのあたり。

連結(れんけつ)をはなれし貨車(くわしや)がやすやすと走りつつ行く線路の上を/佐藤佐太郎『歩道』

昔は、貨物駅といえば操車場という感じで、駅で貨物車に積み込んだり、荷主側が仕立てた貨車を引き入れて、それを連結して列車に仕立てび、途中駅で切り離したり連結しなおしたりしながらそれぞれの貨車を目的地に送るということをしていた。そんなふうに連結したり切り離したり車輛を操る操車場。
連結を効率的に行うために、連結を開放した貨車は突き放して惰行させ転轍機で連結すべき列車のはるほうに誘導して連結した。ちゃんと目的の列車まで到達するようにゆるい坂を下るようにしているところもある。傾斜があれば、なお「やすやすと」ゆく。
傾斜をつくための丘のことを坂阜(または阪阜 はんぷ=hump)と呼ぶ。

坂阜線くだる散転貨車の上日にさらされし熱気が打ちぬ/御供平佶『河岸段丘』

スピードが出過ぎても困るので人がブレーキをかける。貨車につかまってブレーキを操作する危険な作業だ。
作者の御供さんは鉄道警察官のキャリアが知られているが、若いころには操車場にいたこともあるらしい。
 
時代がかわって、鉄道貨物のほとんどはコンテナ。貨車を連結するのではなくコンテナを積み込むことで列車を仕立てればよい。連結したり解放したりするのも2両とか4両の単位。これだけのものになると重量も相当だから突き放したりしたら危なくてしょうがない。

コンテナ台車には「突放禁止」と書いてある。
連結して列車を仕立てるのは入替用機関車。押したり引いたりしながら列車を仕立て、列車を分割して荷役線に送り込んだりする。
 
もはや佐太郎の作品のように「やすやすと走りつつ行く」のを見ることは、ほとんどない。

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もうひとつ佐太郎の作品。
これも名歌。

連結を終りし貨車はつぎつぎに伝はりてゆく連結の音/佐藤佐太郎『帰潮』

 
列車に本線用機関車(本務機)が連結するとき、入替用機関車が列車を仕立てるために数両のコンテナ台車とコンテナ台車をつなぐとき、連結の音に耳を澄ませるのだが、そんなにはっきりと「つぎつぎに」ということはない。
昔に比べれば連結装置の性能も違うし、突放して速度をもったまま連結することもない。連結直前でいったん停止して、おもむろに連結するから後方の車両にまで伝わる衝撃にならないのだろう。

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いま、貨物ターミナルで響いているのはフォークリフトがバックするときの警告音。
列車の入替が行われているときには、からんころんとチャイムが鳴っていたりする。

写真は大阪貨物ターミナル(鳥飼)。わが家の近所。

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