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なにかと嫌われるカラスだが、見ていると面白い。

電線にとまらんとする一瞬を鴉の鋭き趾のひろがる/高安国世『光の春』

足の指=趾と嘴を上手に使っていろんなことをする。
ゴミの袋をくいやぶったり、食べ物を石の間に隠したり。

けっこう爪は鋭いからあれで掴まれたら痛いのだろう。
最近の歌集では、こんな作品があった(《》は傍点)。

わが頭を一瞬《がし》と掴みたる鴉のをりし図書館の森/村上和子『しろがね』
嘴太鴉(はしぶと)の爪が残せる感触の痛みに変はる家へ着くころ
あたまより鴉飛び立つ反動をわれの頸部は長く記憶す

えらい災難でした。
鳥の中では、それなりに重さもあるから「反動」もけっこうしっかりしたものだったに違いない。
 
なぜそんなことになったのか。
作者に思い当たることがないならば、カラスの側のひとちがい。
カラスの巣に悪さをしようとした人間を覚えていて、仕返しをするらしい。
あるいは、知らずにカラスの巣に近づきすぎてしまったり、という場合もあるのだとか。

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巣作りの春となりたり青き枝咋(く)ひもちて鴉の飛びゆく見れば/田附昭二『風の尾』

巣づくりの季節。
これからしばらく、カラスもいくらか神経質になる……と思っておいたほうがよさそうだ。
この写真を撮っていたら、うしろから頭上すれすれをもう一羽がかすめて行ったのでした。
これ以上しつこく写真を撮るなら、がしっとやるぞ!という威嚇なのでしょう。

くわばらくわばら。

繁殖期が一段落して、親離れしたカラスが飛び回るようになると、これは観察する上ではちょっと面白い。若いうちは、警戒心よりも好奇心のほうが強いから、人間との距離が近くなっても構えないのだ。

さて、
永田和宏歌集『午後の庭』にもカラスの歌があるのですが「言つてはいけない知られてもいけない」だから紹介しないでおきます。

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