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2月の岩波文庫の新刊として、高安国世訳『リルケ詩集』が出版された。1月には手塚富雄訳『ドゥイノの悲歌』の改版が出たばかりで、リルケ続きである。この岩波文庫の『リルケ詩集』は、1977年に講談社文庫から刊行されたものを底本として、そこから9篇を削除し、新たに1972年刊行の本から42篇を追加した内容で、初期から晩年に至るまでの代表的なリルケ作品が収められている。
昨年12月号の「高安国世の手紙」の中で引いた『ドゥイノの悲歌』の「第一の悲歌」もちょうど載っている。こういう偶然は嬉しいものだ。以前にも、「塔」2007年4月号の評論「樺太の見た夢」の中で、北原白秋の紀行文『フレップ・トリップ』を引用したところ、その年の11月に岩波文庫から『フレップ・トリップ』が刊行されたことがあって、驚いたものだ。
これらは、もちろん単なる偶然に過ぎないのだが、時代を越えて良い作品が読み継がれていくという意味において、やはり嬉しいことである。「読み継がれる」ということを信じる気持ちは、短歌を作ったり文章を書いたりする上でも、とても大切なことのような気がする。

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